介護などサービスの対日輸出の拡大に期待-日EU・EPAに対するスウェーデンの反応-

(スウェーデン、EU、日本)

ロンドン発

2017年07月25日

日EU経済連携協定(EPA)の大枠合意について、スウェーデンでは、高齢者介護や女性の社会進出支援などサービス分野での貿易拡大への期待が多く報道された。政府は7月14日に発表したプレスリリースで、大企業・中小企業の双方にとって対日輸出拡大の好機だとした。

財とともにサービスの輸出に恩恵

日EU・EPAの大枠合意は、自由貿易を国是とするスウェーデンではおおむね好意的に受け止められている。「スベンスカ・ダーグブラデット」紙(7月6日)は、交渉に当たった欧州委員会のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)のコメントとして、「日EU・EPAはスウェーデン産業にとっても有益だ。日本市場への販売は複雑で高コストだったが、EPAにより、スウェーデンの食品や家具、森林産業に全く新しい道が開かれるだろう」と報じた。

「ダーゲンス・ニヘーテル」紙(7月13日)は、専門家の意見をまとめた特集記事で、「日EU・EPA大枠合意によってスウェーデンの輸出は大きく伸びる。サービス産業、小売り、農産物がその恩恵を受ける」と結論付けている。また、アンナ・リンデEU問題・貿易担当相の「現在、スウェーデンから日本に輸出している企業の3分の2は中小企業だ。そのため、これは非常に重要な協定だ。5年前に韓国と同様の協定が結ばれたが、その後、韓国への輸出は55%伸びた」とのコメントを紹介している。

公的な貿易促進機関ビジネス・スウェーデンのチーフエコノミストであるレーナ・セルグレン氏は、サービス産業や小売りに可能性があり、スウェーデンのサービス貿易に良い影響が出ると述べた。その理由として、日本では急速に高齢化が進展し、労働者不足が深刻化しているが、女性の社会進出比率はスウェーデンなどに比べると依然低いため、スウェーデンの経験と解決法が生かせるだろうとしている。また、小売り産業についても、「日本は先進的な国で、消費者は高品質な製品を求めている。スウェーデン企業はこうした競争に強い」と説明している。

また、ストックホルム商工会議所のチーフエコノミスト、アンドレアス・ハジゲオルギオウ氏も、日本市場の規模や購買力の高さから考えてスウェーデンの輸出額は現在の10倍に拡大する余地がある、日本が市場を開放すればスウェーデン製品の輸出を増やすことができるとみている。それに加え、教育、医療技術、高齢者ケアなどのサービス輸出が増加する可能性もあるとしている。

リンデEU問題・貿易担当相は7月14日、日EU・EPAに関するプレスリリースを発表した。大企業にも中小企業にとっても対日輸出拡大の好機だとした上で、「対日輸出企業の3分の2は中小企業だ」と述べ、さらに、日EU・EPAは「(対日輸出製品の産業集積を有する)ウプサラ、ダーラナ、ベステルノールランド、ストックホルム、イェムトランドなどの地域にとって特に重要で、肯定的な意味を持つだろう」とした。また、2019年以降、日本の自動車関連規制が国際規格に調和することは、スウェーデンの自動産業にとって良いニュースだとみている。

対日投資も拡大の可能性

「ダーゲンス・ニヘーテル」紙(7月13日)によると、現在、約1,500のスウェーデン企業が日本と貿易を行っており、うち150社が日本に進出し、約2万人を雇用している。従業員規模が大きいのは、ABB(電機)、H&M(衣料)、エリクソン(通信機)などだ。前述のセルグレン氏は「スベンスカ・ダーグブラデット」紙(7月7日)において、「日本における外国直接投資残高のGDP比は4%で、スウェーデンの約60%と比較すると低い。日本市場の開放により、多くのスウェーデン企業が進出するだろう。日本は新しいものを採用する能力にたけている。イケア(家具)やH&Mが既に進出しているが、さらに多くの企業が進出するだろう」と述べ、対日投資拡大の可能性を示唆した。

(三瓶恵子、篠崎美佐、岩井晴美)

(スウェーデン、EU、日本)

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