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「米国における職業訓練制度の拡充」目指す大統領令を発表-高度人材の育成が喫緊の課題に-

(米国)

米州課

2017年07月05日

トランプ大統領は6月15日、「米国における職業訓練制度の拡充」と題した大統領令を発表した。米国では技能不足が理由で埋まらない求人ポストが増加傾向にあり、高度人材の育成が急務との認識が広がっている。

連邦政府による職業訓練制度を拡充

トランプ大統領が6月15日に発表した大統領令「米国における職業訓練制度の拡充外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、有給の実習を含む職業訓練制度の拡充を通じて、労働需給のミスマッチを改善し、高収入の安定した雇用を提供することを目的としたもの。ビジネス環境が変わる中、既存または新規の職種が必要とする技能を習得する重要性がかつてないほど高まっているにもかかわらず、連邦政府による従来の支援策が成果を十分に上げていないとして内容を見直す。今後、労働長官を議長としたタスクフォースで、具体的な方策が議論される予定だ。短期大学の無償化などを掲げて高度人材の育成を進めたオバマ前大統領と同じく、トランプ大統領も同課題の解決を重視する姿勢を示した。

産業界は政策への支持を表明

今回の政府の動きに対して、大手経営者団体のビジネスラウンドテーブルは素早い反応をみせた。同日付で発表したプレスリリースで、同団体の教育労働委員会のウェスリー・ブッシュ委員長〔ノースロップ・グラマン最高経営責任者(CEO)兼社長〕は「米国は雇用創出と将来の経済成長を確保するために、能力が高い、技術を有する労働力を必要としている」との現状認識を示した上で、「インターンシップや職業訓練制度などの実務研修はスキルギャップを埋める非常に強力なツールだ」とトランプ政権の取り組みを評価した。

ビジネスラウンドテーブルは6月7日に公表した報告書「米国内のスキルギャップを埋めるべく各社CEOがいかに支援しているかPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」でも、高度人材の確保・育成を企業の共通した課題と位置付け、個別企業の対応を紹介しながら普及啓発を進めている。報告書は、(1)生産年齢人口の増加が、過去1世紀の半分程度にとどまること、(2)労働参加率が過去30年に比べて低水準で推移していること、(3)ベビーブーマーが記録的な数で引退し続けていること、を理由に、各社がスキルギャップの問題に早急に取り組む必要があると訴える。

もっとも、現状では企業レベルの取り組みに差がみられる。企業単位の取り組みを調査したものとして、技術分野の業界団体コンプティア(CompTIA)が5月に発表した「ITスキルギャップ調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」がある。企業経営陣約600人の回答をまとめた調査結果によると、回答者の9割近くが職場におけるスキルギャップの問題を認識している一方、組織的に課題解決に対処しているのは3社に1社程度にとどまる。

スキルギャップが製造業の雇用創出に影響も

必要な技能を持つ人材の不足が懸案となっているのは、トランプ政権が力を入れる製造業でも同様だ。全米最大の製造業団体、全米製造業者協会(NAM)が2015年に発表した報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、今後10年間に約340万人生じると推定される製造業の新規求人のうち、200万の求人ポストがスキルギャップを理由に埋まらない可能性があると警鐘を鳴らしていた。同調査によると、会員企業はエンジニアや研究者を採用する際には一般職員(48日)の約2倍の94日が必要としており、スキルギャップを理由とした人材難が顕在化していることを示す。

製造業の雇用動向でも、リーマン・ショック(2008年)以降しばらくは新規募集数が新規採用数と離職数を下回る時期が続いたが、2012年以降は上回る状況が続く(図参照)。例えば2017年1月から4月までの各月の動きをみると、新規募集数と新規採用数の差は平均6万4,000人で、募集人員の2割近くが埋まっていないが、背景に人材のミスマッチを指摘する報道が多い。在米日系企業からも、エンジニア職をはじめとする高度人材の採用や引き留めに苦労する声が増えている。

図 製造業雇用の推移(2007年1月~2017年4月) (出所)労働省

(秋山士郎)

(米国)

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