新船舶融資法が制定、税や外国人雇用で優遇措置

(パナマ)

メキシコ発

2017年07月21日

新船舶融資法(法令第50号)が6月28日に制定され、船舶融資や船舶融資関連の事業を展開する企業を対象とする税や外国人雇用に関する優遇措置が設けられた。パナマ国内の金融機関による船舶融資を促すのが狙いだ。

優遇措置は法施行日から20年間有効

新船舶融資法の施行日は、6月29日付政府公報第28311-B号に掲載されてから6カ月後で、それまでに細則が定められる。同法制定により船舶融資や船舶融資関連の事業を展開する企業は税や外国人雇用に関する優遇措置が受けられる。なお、優遇措置は施行日から20年間有効となる。

船舶融資に関連した事業を行う企業(外資系、内資系を問わず)が、船舶融資企業として認定されるには管轄官庁から証明を受ける必要がある。船舶融資とは、ローン、株、債券、保険、保証またはその他船舶融資計画に便宜を図る営利活動が対象で、船舶融資に関連する事業とは、(1)船舶の建造、(2)造船所やその他関連インフラの建設、(3)コンテナの製造と修理、(4)海上風力発電所の建設が該当する。パナマ国内で船舶融資業務が認められる企業となるためには、a.銀行監督庁から一般銀行業務免許、国際銀行業務免許または銀行代表事務所免許を受けた銀行、b.リース会社や船舶融資に従事する民間企業、c.船舶融資を行う目的で設立されたジョイントベンチャーのいずれかに属する必要がある。

法人税の免除や関税の軽減も

新船舶融資法による税の優遇措置は以下のとおり。

○パナマ船籍に登録された船舶の建造、売買に必要となる資金の融資に対する法人税の免除。

○同法で定められたプロジェクトに対し、金融機関が融資により得た利子や手数料に対する法人税の免除。

○船舶融資計画、船舶融資取引に対する保険ならびに再保険から生じる収入に対する法人税の免除。

○パナマ船籍に登録された船舶のリース契約で、パナマ海事庁登記所に登記された船舶にかかる法人税の免除。

○造船用または造船所専用の機械、船舶用器具および関連器具の輸入に際しては一律3%の輸入関税のみ(注1)。

また同法には外国人就労についての特別労働規定があり、船舶融資会社として承認を受けた全ての会社は、通常の会社と同様に全社員の10%を超えない範囲内で外国人を雇用できるが(注2)、さらに専門職、技術者または事務手続き担当の外国人(船舶融資を行う上でのノウハウを持つ者など)は、最初の3年間については全社員の25%、4年目は20%、5年目は15%まで認められる。これらの対象となる外国人に対しては5年間有効の特別優遇滞留ビザの交付を受けることができる。

さらに、海事統一窓口(Ventanilla Unica Maritima)が設置され、船籍登録に係る諸手続きをここで行えるようになる。

パナマを船舶金融センターに

パナマ船籍は1917年の法律第63号により登録制度が制定され、2017年で100周年を迎える。パナマ船籍には現在8,122隻が登録され、総トン数は2億1,820万トンと、世界1位の船籍国となっている。しかし、船舶の建造や購入に必要な資金はほぼ全てが国外の金融機関から調達されており、国内の金融機関は担保のための抵当権の設定や登記手続き業務などにとどまっている。こうした状況を踏まえ、国内の金融機関に船舶融資業務の提供を促し、将来的にパナマを「船舶金融センター」とすることを目指して新法が制定された。

(注1)通常は3~15%の関税に加え7%の消費税(選択的消費税に該当する場合は10%)が賦課される。

(注2)労働法17条で「従業員の90%をパナマ人またはパナマ人を配偶者とする外国人で構成する義務」を規定している。

(西尾瑛里子)

(パナマ)

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