労働改革法が成立、勤務時間や休暇取得に柔軟対応

(ブラジル)

サンパウロ発

2017年07月25日

統一労働法(CLT)の改革法案が7月11日の上院本会議で、賛成50、反対26で可決され、14日には官報に掲載された。120日後に施行される。ミシェル・テーメル大統領は、本改革がブラジル経済回復の一助になると同時に、引き続き労働者の権利は守られることを強調した。現行の労働法の下で、多くの労務問題を抱えていたブラジル進出日系企業にとっても朗報となりそうだ。

改定は200項目以上に

改革法案は予想を上回る賛成で可決された。法案可決を受け、アレシャンドレ・パローラ官房長官は「統一労働法の改革により雇用主と労働者の関係はより柔軟になる。新規雇用の創出や生産性の向上にもつながり、ひいてはブラジル経済活性化の一助となる」と述べた。テーメル大統領も「1943年に制定された現行の労働法の下では、これまで企業側と労働者との間に多くの制約があった」とし、労働法を近代化することの重要性を強調した。また、2016年8月の政権発足以降、重要政策の1つに掲げていた労働法改革を1年以内に実現できたことに満足感を示した。

成立した改革法の改定項目は200以上に及ぶ。ポイントは、勤務時間や勤務体系、休暇取得などについて労使間の合意で柔軟に対応できるようになることだ。また、現行労働法には含まれていなかった在宅勤務も可能となる。主な改定項目の概要は以下のとおり。

表 主な改定項目の概要

進出日系企業にも好影響か

改革法の成立は、進出日系企業のブラジルにおける企業活動に与える影響も大きい。多くの労働者を雇用する製造業だけに限らず、それ以外の産業にとっても生産性の向上や労務コストの削減にもつながるだろう。例えば、以前は労働者側が30日間の年次有給休暇の分割取得を要望した場合でも、法律上は原則としてできなかった。企業側にとっても、その間は臨時で従業員を雇用するなどコスト増につながっていた。改定後は、労働者の承諾を得た上で3回まで分割可能となる。ただし、一度の休暇で最低14日間連続して取得しなければならず、さらに、もう一度の休暇も最低5日間連続した取得が義務付けられているので留意が必要だ。

経済界からも好意的な意見が聞かれる。ブラジル産業機械装置協会(Abimaq)のジョゼ・ベローゾ・ディアス・カルドーゾ会長は「以前の労働法は、企業家にとってビジネスの弊害になっていた」と述べた上で、「これまで労働契約がないまま、不当に雇用されていた多くの従業員にとっても良い知らせだ」とし、双方にとってメリットがあることを強調した。さらに、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)法務担当ディレクターのルシアナ・フレイレ氏も「労働法が近代化したことに非常に満足している」と評価した(「EXAME」紙7月12日)。

大統領が今後の微調整を示唆

改正法案は上院本会議で可決された後、13日にテーメル大統領の承認を経て、14日に官報に掲載された。120日後に施行される。なお、テーメル大統領は、成立した労働改革法の幾つかの項目について微調整することを示唆している。大統領令(注)にて発令することが想定され、当地報道によると、そのための準備会議が数週間以内に開始されるという。

(注)大統領令は、大統領が発令し、公布後にすぐに施行される。国会の事前承認を必要とせず、国会の承認は発令後となる。

(辻本希世)

(ブラジル)

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