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EU加盟を目指すセルビアにビジネス視察ミッション派遣

(セルビア)

ウィーン発

2017年07月12日

ジェトロとセルビア開発庁(RAS)は、在セルビア日本大使館の協力の下、6月7~9日にセルビアへのビジネス視察ミッションを派遣した。ミッションでは、同国の地理的優位性や国民の英語力、人材確保の容易さ、地価の安さ、充実した自由貿易協定(FTA)、タックスホリデーなどの優遇策が確認された。参加企業からは、将来的に投資を検討したいという声が多かった一方、EU加盟後の現存FTAの行方を不安視する意見もあった。

勉強会の後、夕食会で大統領と面談

ミッションには、日本、英国、ドイツ、オーストリアや中・東欧などから日本企業18社28人が参加し、業種は商社、金融、製造、食品、ITなど多岐にわたった。

初日の6月7日に、在セルビア日本大使館や国際協力機構(JICA)などによる勉強会が行われた。高原寿一大使や大使館関係者からは、セルビアは日本ではあまり知られておらず過小評価されている面があるが、与党と野党(一部を除く)がともに望むEU加盟に向け改革が行われることで、セルビアが安定・発展していくと認識している、などと説明があった。EU加盟交渉については、35の交渉分野のうち、コソボ問題、財政制度、人権関連など8分野の交渉が始まっており、2020年までに加盟を果たすことが目標だ。外交関係ではロシアが伝統的な友好国で、近年は中国との関係が緊密化している。経済面では、自動車や機械、電力、石炭などの産業が牽引し、欧州債務危機以前の水準に回復したが、国営・公益企業の整理など構造改革や金融面の改革および不良債権処理は遅れているとした。

同日のアレクサンダル・ブチッチ大統領主催の夕食会で、ミッションの一行は大統領と面談。大統領からは、政府の最重要目標はEU加盟で、政治的な安定の下で経済を発展させたいとの説明があった。

セミナーでは投資家からの指摘も

RASによる投資セミナーが2日目の6月8日午前に開催され、同国のビジネス環境について説明を受けた。投資に適した業種として、自動車、IT、金属、機械、航空機などが挙がった。また、2014年3月からの経済構造改革に伴い、経済成長が本格化していること、国民の86%が英語を話すこと、8つの公立大学と9つの私立大学があり優秀な人材の確保が容易なこと、などが強みとして挙げられた。

続いて、セルビアに進出している外資企業が組織する外国投資家評議会(FIC)は、(EU加盟や透明性の向上のために)規制が頻繁に変わること、政府機関の実務能力が発展途上であること、司法手続きのスピードが遅いこと、などが改善要望事項として指摘された。

財務省からは、国内14カ所の経済特区(フリーゾーン)では、関税や電力・ガスなどに課される付加価値税が免税され、欧州の東西を結ぶ汎(はん)ヨーロッパ回廊(主要な物資を運ぶためのルート)のうち回廊7と回廊10へのアクセスが容易だと説明があった。また、手厚い地方自治体の支援やロジスティクスの利便性(税関手続き、荷受け、荷降ろし、船積みがスムーズに行われるワンストップサービス)も強調された。さらに、セルビア市場は小さいものの充実したFTAを通じて世界の10億人以上の市場とつながっていることや、10億ディナール(約11億円、1ディナール=約1.1円)以上の投資で100人以上の雇用を行った場合に、利益が出てから10年間、法人税が免除されるタックスホリデーについて紹介があった。

さらに、セルビアに所在する日系企業で構成される日本ビジネスアライアンス(JBAS)は、貿易関連でEUに準拠した法整備が進んでいること、賃金がEUに比べて安いこと、国の支援があること、国内の購買力が増大していることなどを挙げて、同国に投資する利点を強調した。一方、弱点としては、セルビアのEU加盟が決まれば、ロシアなど他国との貿易協定の見直しが必要となることが挙げられた。

特色のある外資系企業や地場企業を訪問

視察団は6月8日午後に、インジヤ市の工業団地を訪問した。同市は、首都ベオグラードと第2の都市ノビサドの中間に位置し、高速道路に近く、鉄道の引き込み線を入れることができるロケーションの良さが売りで、現在20の外国投資案件を有している。また、税関が設置される計画もあり、利便性がさらに向上する見込みだ。市内にはインターナショナルスクールが複数あり、英語を話す住民も多い。

インジヤ市に進出しているグルンドフォスは、日本にも製造拠点を有するデンマークのポンプメーカーで、600人弱を雇用している。進出の決め手となったのは、ロシアやトルコの顧客にスムーズに納品できるロケーションだ。ベオグラードとノビサドの中間に当たるため、(IT人材を含め)質の高い労働力が容易に得られること、英語を話す人が多いことを優れた点として挙げた。同じく同市に拠点を構え、2,378人を雇用しているドイツの自動車シート用ヒーター製造のIGBオートモーティブは、空港や高速道路に近く、質の高い人材の確保や職業訓練が容易なことを優れた点として挙げた。

また視察団は、地場企業のミクロエレクトロニカ〔IoT(モノのインターネット)用機器開発ツールなど電子基板製造〕とIVA28(金属加工業)を訪問し、他社との共同開発やドイツなどへの輸出について説明を受けた。

地の利があるセルビアに投資を検討との声も

今回のミッションには、情報の少ないセルビアの投資環境を知るために参加した企業が多く見受けられた。参加者からは「誘致する側だけでなく、投資家からの意見を聞くことができた」「RASや商工会議所とコンタクトを得た」「大統領主催夕食会をはじめとするセルビア側の受け入れにホスピタリティーを感じた」などの評価を得た。また、西欧と中・東欧、ロシア、中国を結ぶ地の利があるセルビアに将来的に投資を検討したいという感想があった一方で、セルビアのEU加盟時期や、加盟後のロシアや他国とのFTAの先行などを不安視する声も聞かれた。

(田中由美子)

(セルビア)

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