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首都圏のMRT1号線が全面開通、渋滞解消に期待

(マレーシア)

クアラルンプール発

2017年07月28日

首都クアラルンプールと近郊を結ぶ大量高速輸送システム(MRT)1号線が7月17日、全面開通した。マレーシア政府はMRT開通を、経済・社会を大きく変えるゲームチェンジャーになり得るとして、大きな期待を寄せる。MRTの目的は渋滞の解消にあるが、自家用車ではなくMRTの利用を促すためには、公共交通機関の接続性が充実する必要がある。


自動車から鉄道へのシフトは政府の悲願

MRT1号線は首都圏(クランバレー)を北西(セランゴール州スンガイブロー)から南東(セランゴール州カジャン)までつなぐ(添付資料参照)。クアラルンプール市中心部の観光地が路線のほぼ中間地点で、国立博物館のあるネガラ・ミュージアム駅、大型市場のパサール・セニ駅、首都圏最大の繁華街ブキット・ビンタン駅がある。全長51キロを約86分で結ぶが、そのうち、クアラルンプール市内の9.5キロが地下トンネル区間となる(全駅数31駅のうち7駅が地下駅)。2016年12月16日には、先んじて1号線の1部区間スンガイブロー駅~スマンタン駅が開通していた。車両は4両編成で、最大1,200人の乗客を収容でき、総じて3.5分間隔で運行する。

MRT開通によって、多くの国民が遠方からショッピングセンターや学校、病院などの重要生活インフラに容易にアクセス可能になる。政府はMRTが経済・社会構造を転換させる契機になるとして、その完成に力を入れてきた。現状、1日当たり乗客は15万人と予想されている。MRTの意義は大量の人員移動やアクセス改善だが、最大の狙いは渋滞の解消にある。朝夕のクアラルンプール市内の渋滞は経済的損失が大きく、政府も問題解決を迫られていた。MRT導入で、1日当たりで首都圏を走行する自動車16万台の削減効果が見込めると試算されている。また、国民に自動車から鉄道へのモーダルシフト(注)を促すことで温室効果ガス排出抑制につながり、環境面でのメリットも受益できる。

写真 クアラルンプール市内を走るMRTの車両(MRT提供)

公共交通機関の利用向上には接続性がカギ

MRT計画は2010年12月に始動したが、国民の関心はそれほど高くなかった。その理由は接続性にある。現在、クランバレー内ではLRT(ライトレール)、モノレール、マレー鉄道(KTM)が走るが、駅の交差が少ない上、交差があっても乗り換えに時間がかかる。日系企業もマレーシアのインフラ面の課題について、「公共交通機関」を挙げる企業が57.3%と過半数に及び、その理由に接続性を指摘する声が目立っていた(図参照)。

 図 インフラの改善余地

政府はLRTのさらなる拡張、バス高速輸送システム(BRT)の整備、MRT2号線・3号線の建設などを進める予定だ。目標として、都市部における公共交通機関の利用率を2009年の10%から2030年までに40%へ引き上げるとするが、そのカギは接続性にあるというのが衆目の一致するところだ。

7月17日の開通式典でナジブ首相は、8月31日の独立記念日まで運賃を半額にすると発表した。通常でもスンガイブローとカジャンの間は電子マネーで5.5リンギ(約143円、1リンギ=約26円)、現金払いで6.4リンギと安価に抑えられている。渋滞における心理的ストレスや高速道路料金、ガソリン代などを勘案すると、車からMRTに通勤手段がシフトする可能性は期待できる。MRTが完成しても、駅と自宅の間は車を利用せざるを得ないために、政府は7,800台分が駐車できる駅駐車場(パーク&ライド)を整備している(「ニュー・ストレーツ・タイムズ」紙7月16日)。MRTの狙いとしての脱渋滞達成の必要条件がそろう中、接続性の向上には時間どおりの運行に加えて、駅から周辺地域に走る連絡バスの円滑な運行も重要だ。

MRT建設に日系企業が大きな役割、今後も商機

MRTの建設には日系企業が果たした役割も大きい。三菱重工業は軌道設備一式において、設計、機器供給および据え付け工事を担当した。同社はこれまでフィリピン、インドネシア、台湾、ドバイなどの大規模な鉄道システムプロジェクトにおいて、構造物や線路の建設から車両・運行システムまでを一括で提供するフルターンキー・ベースで取りまとめるなど、この分野で豊富な実績を有している。また、LRTやモノレールへの納入実績がある明電舎は変電所の饋(き)電および配電設備一式を受注し、機器の供給および現地据え付け工事を担当した。駅構内のエスカレーターや動く歩道の設計、供給、設置などは東芝エレベータの関連会社MSエレベーターズが担った。なお、車両はドイツのシーメンスが製造している。

日系企業は今後もMRTを通じた商機を捉えることができそうだ。特に大きな恩恵を期待できるのは、小売業とみられる。クアラルンプール市中心部の大手日系小売業者は、「MRTの開通によって、これまで渋滞や交通アクセス面から都心に出掛けることをおっくうだと感じていた、比較的富裕な華人を中心とする郊外の消費者が新たな購買層になる」と売り上げの拡大に期待する。別の日系大手小売業者は、電車通勤になると車で通っていた時より人の目が気になることで、女性を中心にファッションへの関心が高まり、衣服・履物、その関連品の販売が増加する可能性に注目している。

(注)地球温暖化など環境問題に対する意識が高まる中、自家用車やトラックなどの車両から、海運や鉄道など環境負荷の少ない移動・輸送手段への転換を図ること。

(新田浩之)

(マレーシア)

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