欧州の農業協同組合・生産者団体、日EU・EPA大枠合意を歓迎-家族経営など日EUの農業に共通点との認識示す-

(EU、日本)

ブリュッセル発

2017年07月10日

欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体であるCOPA-COGECAは7月6日、日EU経済連携協定(EPA)の大枠合意を受けて、「EUの畜産業・ワイン部門にプラス効果」が期待できるとする声明を発表した。その中で、EUと日本の農業は、高付加価値志向で、安全性重視、家族経営に支えられているなど共通点があり、EPAは双方にとってプラスとの認識を示した。また同団体は、食品流通事業者系の欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)およびフード・ドリンク・ヨーロッパとともに、EPA大枠合意を歓迎する声明を発表している。

EUの畜産業やワイン部門にプラスの効果を期待

農業協同組合・農業生産者団体COPA-COGECAは7月6日、日EU首脳会談で大枠合意に達した日EU・EPA(2017年7月7日記事参照)について、「EUの畜産業・ワイン部門にプラスの効果が顕著」とする声明を発表した。同団体の中核組織である欧州農業組織委員会(COPA)のマルティン・メリル会長は「この野心的な通商協定がまとまったことはEUの(農業)生産者にとって朗報だ。日本市場が開かれることは欧州の食肉・乳製品や、ワイン、高付加価値な加工食品の利益になると考える。また、EPAは日本とEU双方の経済にとってプラスの効果があると確信する。なぜならば、日EUの農業は高品質で持続可能な農業を志向、食品安全を重視し、家族経営に支えられているなどの共通点を持っているからだ」と指摘した。

また、もう1つの中核組織の欧州農業共同組合委員会(COGECA)トーマス・マグヌション会長は「偽ブランドからわれわれの高品質な食品を守るためのEU地理的表示(GI)制度を尊重することに日本が合意したことは歓迎すべきだ。また、今回のEPAはEUと同じ家族経営の農業生産者が基盤を担っている日本の農食品産業を脅かすようなことはないだろう。実際、日本の懸念だったコメは協定対象から完全に外されている。これは(今後、EUと通商協定を結ぶ)他の貿易相手国に対して、バランスを考慮した通商協定があり得るという明るいメッセージを送ることにもなる」と述べている。今後、EPAが発効した場合、ワインやハードタイプのチーズ(チェダーやゴーダなど)は関税(発効後即時もしくは撤廃期間を経て)が完全に撤廃、牛肉も段階的に削減され、豚肉やその他の乳製品の市場アクセスも改善することを成果として強調した。

日本市場で競合相手と対等な競争条件に

このほか、COPA-COGECAは同じく7月6日に、欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)およびフード・ドリンク・ヨーロッパとの共同声明を発表し、同EPAを歓迎する意向を明らかにしている。3者は「欧州の農食品部門にとって、(今回、大枠合意した)EPAは包括的な関税削減、衛生植物検疫措置(SPS)などの非関税障壁の見直しを意味し、市場アクセスや貿易条件の改善につながる」と前向きに評価した。

COPA-COGECAのペッカ・ペショネン事務局長は「今回、まとまったEPAが農業生産者に良い収入をもたらすことを願う。野心的な通商協定は高付加価値農業に基盤を置く日EUの経済に利益をもたらすだろう。特にEU側の食肉・乳製品、ワインにとって日本市場参入の好機と期待している」とコメントした。

フード・ドリンク・ヨーロッパのメラ・フレーベン会長は「欧州の食品・飲料生産事業者は日本との野心的な通商協定で利益が得られると考える。この結果、日本と有利な通商協定を結ぶ競合国・企業と対等な競争条件に立つことができる」「今後、残された課題の解決、最終的な協定テキストの公開が待ち望まれる」との見解を示している。

CELCAAのパスカル・ルーイエ事務局長は「EPA交渉の初期段階から、われわれは野心的な通商協定を強く支持してきた」「EPAのおかげで高付加価値商品の対日輸出は拡大するだろう」と抱負を語った。

なお、欧州の食品を扱う日系専門商社も「EPAの効果で、パスタ、チーズなどEU原産の高級食品・食材を日本市場で紹介する良い機会になりそうだ。これまでは売れ筋の商品を輸出するにとどまっていたが、関税(引き下げ)相当の値下げが期待できれば、幅広い商品を普及させるチャンスになる」と意気込みを述べている。

(前田篤穂)

(EU、日本)

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