ビジネス協力に関する各種協定を締結-ソボトカ首相の日本公式訪問(1)-

(チェコ、日本)

プラハ発

2017年07月20日

ボフスラフ・ソボトカ首相が6月27~30日、日本を公式訪問し安倍晋三首相と会談、両国の緊密な経済関係は貿易、投資、最先端技術分野でさらなる深化の可能性があると述べた。また直行便就航に向けて交渉が開始されたことを評価したほか、両首脳立ち合いの下、ワーキングホリデーに関する協定も締結された。ソボトカ首相の訪日について、2回に分けて報告する。

日本はアジア第3の貿易相手国

2017年は日本とチェコの国交回復60年周年に当たる。チェコ首相の日本公式訪問は、2005年のイジー・パロウベック首相以来12年ぶり。ソボトカ首相は、イジー・ハブリーチェック産業貿易相、ダニエル・ヘルマン文化相、チェコ投資・ビジネス開発庁(チェコインベスト)のカレル・クチェラ長官およびチェコ商工会議所が率いる企業視察団を伴って来日し、安倍首相、大島理森衆議院議長と会談した。

安倍首相との会談では、経済および文化に関して協議が行われた。ソボトカ首相は「プラハ~東京間の直行便就航が実現すれば、貿易・観光部門においてさらなる発展が見込まれる」と述べ、両国間で航空協定締結に向けた交渉が開始されたことを評価した。国土交通省によると、6月23日に東京で同省航空局とチェコ運輸省民間航空部がコードシェア枠組みの設定など新たな航空協定締結に向けて意見交換をしたという。

ワーキングホリデー協定と再保険協定を締結

会談後両首相は、ワーキングホリデーに関する協定の締結、ジェトロとチェコインベストの「アクションプラン2017」、日本貿易保険(NEXI)とチェコ輸出保証・保険公社(EGAP)の間の「再保険協定」の交換式に立ち会った。

ワーキングホリデーに関する協定は18歳から30歳までを対象年齢とし、相手国で最長12カ月間、労働許可なしで一時的な就労を認める。チェコは既にカナダ、ニュージーランド、韓国、イスラエル、チリと同様の協定を締結している。

同協定には在チェコ日系企業の一部が関心を示しており、低失業率による人手不足解消の手段として取り入れる可能性がある。ジェトロの調査によると、5月現在の在チェコ日系企業は254社で、うち製造業は103社、雇用者は約4万7,000人に達している。

ジェトロ、チェコインベスト間のアクションプラン2017は、相手国に進出する、あるいは既に進出している企業の支援、ビジネス環境整備、IoT分野の企業支援、日EU経済連携協定(EPA)締結の促進を目的とした事業の実施などを盛り込んでおり、また再保険協定は、両国からの第三国輸出に係る対外取引リスクを協調してサポートすることにより、第三国への大型輸出案件の促進を図ることを目的としている。

インダストリー4.0の分野でも協力

また、チェコ産業連盟と日本のロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)は6月28日、共同声明を発表した。両者は今後、IoTなどの活用を含むインダストリー4.0の分野で協力を行い、サイバーセキュリティー、国際標準化など関連したさまざまな課題の解決に向けて連携していく。

チェコ政府によると、ソボトカ首相はさらに29日、京都に移動して、医用・分析機器大手の島津製作所で、同社とチェコ第2の都市ブルノにある聖アンナ大学病院付属国際臨床研究所(FNUSA-ICRC)との協力覚書の交換に立ち会った。これは脳腫瘍の研究などに応用できる質量分析計の開発を目指すもので、FNUSA-ICRCのゴラズド・ストキン所長は「われわれはEU基金を利用して島津製作所の最新鋭の質量分析計を購入した。今後は骨髄腫、脳腫瘍、認知症などの新しい分析計の開発において協力していきたい」と述べた。

なお、ソボトカ首相一行は東京から京都への移動に新幹線を利用し、首相は「チェコは高速鉄道プロジェクトの準備段階にあるが、新幹線はチェコにとって多大なインスピレーションをもたらす」と述べた。

(中川圭子)

(チェコ、日本)

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