著作権保護の強化でネット音楽市場が成長－立法措置進み、取り締まりも成果－

映画や文学についても法律や通知で保護

国家版権局は4月、「2016年インターネット著作権保護年度報告」を発表した。2016年12月に中国のネット利用者は前年比6.2％増の7億3,125万人に達した。そのうち、携帯端末からの利用者が95.1％を占め、その数は前年比12.2％増の6億9,531万人だった。各ネットサービスの利用者数をみると、動画は前年比8.1％増の5億4,455万人、音楽は0.4％増の5億313万人、ゲームは6.5％増の4億1,704万人、文学は12.3％増の3億3,319万人となった（図1参照）。また、ライブ配信の利用者も3億4,400万人に達した。

2016年に可決あるいは公布された、ネット上の著作権を保護する法律などとして、発表では下記の5つが挙げられている。

1. 映画産業促進法（2016年11月7日、全国人民代表大会常務委員会第24回会議で可決）
2. オンライン文学作品著作権管理の強化に関する通知（2016年11月14日、国家版権局が公布）
3. モバイルインターネットアプリケーション情報サービス管理規定（2016年6月28日、国家インターネット情報弁公室が公布）
4. ソフトウエア・アプリケーション市場の著作権秩序を規範化する通知（2016年11月30日、北京市版権局が公布）
5. インターネット知的財産権案件に係る審理ガイド（2016年4月13日、北京市高級人民法院が公布）

2016年の活動期間に467件を摘発

国家版権局は2005年から他部門と連携し、ネット上の著作権侵害コンテンツや海賊版を取り締まる「剣網行動」を実施している。2016年の活動期間中に各地で摘発された案件は514件、行政処罰の罰金額は467万元（約7,470万円、1元＝約16円、司法機関に移送された案件は33件、案件に係る金額は2億元、閉鎖されたウェブサイトは290サイトだった（表参照）。

オンライン配信音楽の著作権侵害案件が急減

主な裁判判例のデータベース上に公開されている4,459件のネットワーク伝達権侵害案件の民事判決と裁定書によると、ネットに配信された動画に関わる案件は全体の37％を占め、最も多かった。文学、画像はいずれも24％で、音楽は12％と前年比32ポイント減だった（図2参照）。2015年7月に国家版権局がオンライン音楽プロバイダー各社に無許諾の楽曲を削除するよう要請し、220万曲余りがネット上から削除された。音楽の侵害案件が大幅に減少した背景として、2015年に実施された大規模な取り締まりによって、オンライン配信による音楽の著作権の環境が改善されていることが挙げられる。

デジタル伝達技術の発展に伴い、従来のウェブサイト、検索エンジン、ブラウザにとどまらず、モバイルアプリ、テレビのセットトップボックス（注）、微博（ウェイボー）や微信（ウェイシン）などの新しい媒体における著作権侵害が増加傾向にある。

案件を審理した法院のある上位3地域は北京市、浙江省、広東省だった。地方法院が審理したネット上の著作権紛争案件のうち、ネット企業が多くあるこれら3地域で全体の8割以上を占めた。

音楽著作権協会のライセンス収入は過去最高に

ネット上の著作権保護環境の改善に伴い、デジタル音楽市場が成長している。音楽の著作権を管理する中国音楽著作権協会の2016年の音楽著作権ライセンス収入は、前年比8.2％増の1億8,400万元に達し過去最高となり、そのうちネットなどからのライセンス収入は約6,845万元となった。

2016年12月に国務院から発表された「第13次5ヵ年規画（2016～2020年）期の国家戦略的新興産業の発展規画」では、「2020年の中国におけるデジタルクリエーティブ関連産業の規模は8兆元に達する」とされており、関連市場の拡大に伴い、ネット上の著作権保護は引き続き強化されていくものとみられる。

（注）テレビ放送、衛星放送などの放送信号を受信して、一般のテレビで視聴可能な信号に変換する装置。デジタル専用チューナーなど。

（赤澤陽平）