「ベトナム投資カンファレンス」が東京で開催-フック首相はRCEP早期締結への期待を表明-

(ベトナム、日本)

アジア大洋州課

2017年06月21日

ジェトロは6月5日、東京都内で「ベトナム投資カンファレンス」を開催し、ベトナム、日本両国の民間企業や政府機関から約1,500人が参加した。ベトナムのグエン・スアン・フック首相、グエン・チー・ズン計画投資相、チャン・トゥアン・アイン商工相が登壇し、投資環境上の課題に対するベトナム政府の取り組みなどを紹介した。フック首相からは、広域の自由貿易協定(FTA)に関して前向きな発言もあった。

首相と2閣僚が投資環境や関連施策を直接アピール

フック首相は基調講演において、ジェトロの「2016年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」の結果を基に、ベトナム進出日系企業の約6割が2016年の営業利益見込みを「黒字」と回答している点や、今後の事業展開の方向性を「拡大」すると回答した割合が7割弱を占めていることに関し、「われわれにとって大きな弾みになる」と述べた。また、世界銀行が毎年発表する190ヵ国のビジネス環境ランキング「Doing Business」で、ベトナムは2016年の91位から2017年には82位に上昇していることなどにも言及し、投資環境が改善されていることを強調した。

パネルディスカッションでは、ベトナム側からはフック首相、ズン計画投資相、アイン商工相が、日本側からは三菱東京UFJ銀行の平野信行代表取締役会長、住友商事の中村邦晴代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)、東和ベトナム(TOWA Industrial Vietnam)の渡邉豊代表取締役社長、イオンモールの吉田昭夫代表取締役社長が登壇した。日本側はいずれもベトナム進出企業として、同国の政治・経済状況の安定性や市場拡大といった魅力を説明した後、裾野産業やローカル人材の育成、規制緩和の必要性にも触れた。これら課題に関連して、アイン商工相とズン計画投資相は、中小企業支援法案について国会で議論されていることや、人材育成が政府の大きな改革方針に含まれている点など、ベトナム政府としての取り組みを紹介した。

TPPにかかわらず国内改革を継続する意向示す

ベトナムや日本が参加する広域FTAについても、フック首相から発言があった。環太平洋パートナーシップ(TPP)協定について、同首相は「米国のTPP離脱は、一番望まないシナリオの1つだったが、米国の決定を尊重する」とした上で、「ベトナムはTPPがあってもなくても国内構造改革を進め、国際統合を強化していく」とし、これまで通商政策とともに進めてきた国内改革を続けていく意向を示した。また、「TPPについては、米国抜きでの可能性も検討するよう商工相に指示してある」とも述べた。

中国やインドも参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)については、「RCEPを通し、ベトナムと周辺国とのサプライチェーンを強化していきたい」とし、「早期の締結を期待している」と語った。

安倍首相もベトナムとの関係発展を強調

同カンファレンスでは、「投資ライセンス授与式・MOU(覚書)交換式」として、ベトナムの国有・民間企業と日本企業との投資協定書の締結や、日本企業への投資登録証明書の交付などが行われた。

閉会あいさつとして安倍晋三首相が登壇し、「今後もフック首相と手を携えて、質の高いインフラ整備、投資環境の改善や人材育成を通じ、日本企業の活発な投資を後押ししていく」と述べ、フック首相とともに両国の経済関係を発展させることを約束した。

日系企業の参加者からは、ベトナムへの投資を呼び掛けるフック首相の姿勢について「パネルディスカッションに自ら参加するという力強いコミットメントが非常に好印象」「フットワークの軽さが印象的だった」といった声が聞かれた。また、「授与・交換された投資ライセンスや覚書は、農業関連のものが多かった。ベトナム政府が当該分野へ高い関心を示しているというメッセージとも思えた」との声があった。

写真 フック首相の基調講演(ジェトロ撮影)
 写真 会場の様子(ジェトロ撮影)

(小林恵介)

(ベトナム、日本)

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