日中の制度の特徴や相違を解説-会計・税務セミナー開催(1)-

(中国)

北京発

2017年06月29日

ジェトロは、6月9日に北京市で中国日本商会と、16日には天津市で天津日本人会との共催により、中国の会計・税務に関するセミナーを開催した。税理士で北京・天津大野木マイツ諮詢の平出和弘総経理が、中国の会計・税務の特徴や、中国からの海外送金について解説した。同セミナーの要旨を2回に分けて報告する。

「発票」を基準とした中国の会計

中国の会計・税務は、「考え方はシンプル」「形式重視」といった特徴がある。決算月は12月に統一されている。法人の増値税(日本の「消費税」に相当)税務申告は原則として毎月あり、個人所得税計算上の費用控除は毎月の基礎控除しかない。家族構成により異なる扶養控除もある日本(年末に年収ベースで調整)と比較すると、シンプルだ。他方、「発票」(法定の用紙)の有無が重要で、発票がないと途端に処理できなくなるといった形式重視の側面もある。

発票は、増値税(付加価値税)法上の売り上げを認識する証憑(しょうひょう、取引の成立を立証する書類)だ。発票がなくても本来、社内で費用精算できるが、発票がないと税法上の損金算入ができないことから社内精算してもらえないという会社もある。ビジネス上では発票を請求書や領収書と位置付ける傾向が強く、また会計記帳を発行・受け取りをした発票を基に行っているケースも多くみられる。決算書は本来、損益や財務状況を理解する手段であるべきところ、税務局に毎月の増値税を申告する目的で作成するものと考える中国の財務担当者が多く、決算書作成の目的意識が異なるため、われわれが想定する「発生主義」による数値になっていないことがよくある。

中国と日本の税務は相違点もあるが、会計の基本的な考え方は本来同じはずだ。中国の会計準則は国際会計基準を意識してつくられている。

中国の決算書では1級科目が固定

中国の現地法人の決算書をみた時、貸借対照表(BS)上で「『その他未収入金』に日本の感覚では未収入金として分類できないものが計上されている」ことがよくある。これは、中国の決算書では1級科目が固定されており、一般的な債権勘定科目としては「売掛金」「前渡金」「その他未収入金」の3つの科目で、分類不能なものは「その他未収入金」に計上される傾向があるために生じている。例えば、まだ発票を入手できていない支払いを、発票を取得するまで費用科目に計上せず「その他未収入金」に計上するといったように、「その他未収入金」が日本での「仮払金」のように使われることも多い。

損益計算書(PL)上では「銀行手数料や支払利息が分類される『財務費用』の項目がマイナスに表示されているのはなぜか」という質問もよくある。これは、収入である受取利息や為替差益が財務費用の項目としてマイナス計上されていることが理由である。

決算書の1級科目の内訳を確認するには、日本の残高試算表のような資料である「発生余額表」をみることで、2級科目、3級科目に分類されている項目を確認できる。なお、交際費については、日本では一定の要件を満たす会議費を交際費課税の対象外にできるが、中国では会議費として認められるものはほとんどない。飲食店発行の発票は少額でも税務上、交際費に計上される。税務費用計上の対象となるのは、実際に使った交際費の60%の金額までと決められている。

(日向裕弥)

(中国)

ビジネス短信 449b72f850032051