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保守党とDUPの連携協議、先行きは不透明-北アイルランド議会正常化問題に影響も-

(英国、アイルランド)

ロンドン発

2017年06月15日

下院総選挙(6月8日)で過半数を失った保守党は、北アイルランドの民主統一党(DUP)との連携を図るための協議を進めている。英国のEU離脱(ブレグジット)に伴うアイルランドとの国境線の扱いについての交渉ポジションを含め政策に共通点がある両党だが、同性婚など個別政策では相違もあり、両党連携の行方を見通すのは困難だ。加えて、北アイルランドの議会運営の正常化の問題も絡んでおり、北アイルランド情勢を占う上で目が離せない状況といえる。

政策に共通点の一方、相違も

DUPは元来、EUに懐疑的とされる。今回の総選挙のマニフェストでも、EU離脱交渉では「包括的な自由貿易や関税についてのEUとの合意」や「新規市場・既存市場との貿易に向けた関税の調整」に焦点を当てるべきとした。これは、EUとの包括的自由貿易協定(FTA)の締結や関税同盟からの離脱を志向するメイ首相の立場と一致する。

またDUPは、地理的・歴史的特殊性を踏まえ、北アイルランドに特別な地位を与えようとする考え方には反対の姿勢だ。英国を構成するイングランド、スコットランド、ウェールズの3地域から切り離されることを良しとしないことは、英国一体の政策運営を行おうとしているメイ首相や保守党の考え方にも共通する。

このような政策的な親和性から、保守党にとってDUPは比較的くみしやすい相手とみられるが、容易に協調関係が築けると結論付けるのは早計だ。まず、EU離脱に伴って生じることが懸念されているアイルランドとの国境管理の強化、いわゆる「ハードボーダー」をめぐる問題が横たわる。DUPとしてハードボーダーは看過できるものなく、保守党もこれを回避したいとするが、問題解決に向けた明確な落とし所は現在のところ存在しない。その行方はEUとの交渉に依存するが、DUPの考え方が保守党やメイ首相の政策決定に反映されやすくなることで、英国側のスタンスと交渉ポジションの決定が複雑化しかねない。さらに、両党の意見が食い違うことになれば、その関係にも影響を及ぼす。

また、個別政策についても、同性婚についての考え方で見解が異なる。同性婚を容認する保守党に対し、DUPは一貫して反対の姿勢で、北アイルランドは英国で唯一同性婚が認められていない地域だ。保守党との協調により、DUP内で同性婚への考え方に修正が入るようなことになれば、DUPの内部分裂に発展する可能性も指摘されており、保守党にとって綱渡りとなる議会運営が一層困難になる。

北アイルランドの正常化協議が難航

また、保守党とDUPの協調が北アイルランド議会や自治政府の運営に与える影響についても注目される。

北アイルランドでは2017年3月以降、DUPとシン・フェイン党の対立により議会運営ができない状態が続いており、この正常化に向けた協議が英国、アイルランド両政府も交えて続けられてきた。ジェームス・ブロークンシャー北アイルランド相は協議の期限を6月29日に設定し、期限が刻一刻と近づく中、DUPと保守党の接近がシン・フェイン党の態度硬化につながっている。同党のジェリー・アダムズ党首は「(DUPと結び付きを強めた)保守党政府を公平・中立と見なすことはできない」と批判を強めている。

協議が決裂した場合、北アイルランド政府・議会による自治でなく、英国政府が直接統治を行う事態に発展することとなり、政情不安やそれに起因するビジネス環境の不確実性が生じることが危惧される。

アイルランド産業界には期待感も

EU離脱をはじめとする北アイルランド情勢についてのもう1人の当事者ともいえるアイルランドでは、首相の座を退いたエンダ・ケニー前首相が、辞任直前の6月11日にメイ首相と電話会談し、速やかに北アイルランドの政治運営機能を回復させることや、英国のEU離脱後もかつてのハードボーダーに回帰させないことなどの意思を確認している。

他方、英国市場への依存度の高いアイルランド産業界は、短期的にはユーロ高ポンド安が輸出に与える影響を懸念しているが、長期的には英国との関係が最善のかたちで維持されるソフトブレグジットに落ち着くことへの期待を示している。しかし、北アイルランドの政情不安につながることを懸念する声も根強く、両国にとってまずは北アイルランド議会の正常化と安定運営が最優先課題となりそうだ。

(佐藤央樹)

(英国、アイルランド)

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