中国銀聯、QRコード電子決済サービスに参入
(中国)
上海発
2017年06月22日
銀行間の決済ネットワークを運営する中国銀聯は、QRコードを使った電子決済サービスに参入する。2015年末から導入した非接触型決済サービスの普及が進まない中、成長著しい電子商取引(EC)市場で先行する「支付宝(アリペイ)」や「微信支付(ウィーチャットペイ)」を追う狙いがある。
拡大する電子決済市場に対応
中国銀聯は5月27日、40余りの商業銀行と共同でQRコードを使った電子決済システム「雲閃付(QuickPass)」を運用すると発表した。
中国銀聯は2002年6月に設立され、発行するデビットカード・クレジットカードの「銀聯カード(ユニオンペイ)」による決済サービスは実店舗の決済をほぼ独占してきたが、電子決済市場では支付宝や微信支付が急速に普及したため、対応が求められていた。
中国人民銀行(中央銀行)が発表した2016年の非現金決済概況によると、電子マネーによる決済金額は2,494兆元(約3京9,900兆円、1元=約16円)と、銀行カードによる決済金額(742兆元)の約3倍に拡大した。また電子マネー決済のうち8割以上を占めるパソコンによる決済の伸び率が前年比3.3%増にとどまる一方、モバイル決済はシェア6%と小さいが、前年比45.6%増と急成長している(表参照)。特に支付宝などの非金融機関では約2倍に増えた。一方、銀行カードによる決済額は前年比2.7%増にとどまり、1回当りの額も22.2%縮小した。
決済方法 | 金額 | 前年比 |
---|---|---|
電子マネー | 2,494 | △ 0.5 |
パソコン | 2,085 | 3.3 |
モバイル | 158 | 45.6 |
(非金融機関) | 99 | 100.7 |
銀行カード | 742 | 10.8 |
振り込み(振り替え) | 543 | 15.3 |
消費 | 57 | 2.7 |
(出所)中国人民銀行の発表
中国銀聯は2015年12月、近距離無線通信(NFC)を利用した非接触型決済「雲閃付」を発表したが、利用者が少なく、市場シェアも低い。NFC決済は個人情報保護や安全性でQRコードによる決済より優れているとされるが、関連企業が多く利益配分が難しい上、ソフトウエア導入に対する要求も高く、利用拡大に向けての障壁が高いとされる。これに対し、QRコードによる決済は操作が簡単で手数料も安く、実店舗の導入費用も抑えられるため急速に普及している。中国銀聯はQRコード決済の導入に伴い、従来の銀行カードやNFC決済も含めた多様な決済方法で業界をリードするとしている。
香港とシンガポールでもサービス開始
中国銀聯は、QRコードによる電子決済サービスを、6月2日から香港とシンガポールでも展開すると発表している。電子決済サービス各社は海外に積極的に進出しており、支付宝は5月27日から開始したモナコを含めると、決済サービスの利用を25カ国・地域の計12万店余りに拡大、現地の金融機関とも提携し、米ドルをはじめ英ポンドやユーロ、日本円など決済できる通貨が18種類に達したという。また、微信支付も5月時点で米国を中心に15カ国・地域でサービスを提供している。
中国国家観光局の発表によると、2016年の中国人海外旅行者は1億2,200万人で、国内旅行を含む旅行者全体の3%にすぎないが、海外での消費額は1,098億ドルと、全体の16%に上った。電子決済各社間の競争は海外でも一段と激しくなると見込まれている。
(劉元森)
(中国)
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