知財審査の遅延解消に期待-政府が産業財産庁行動計画2017を発表-

(ブラジル)

サンパウロ発

2017年06月01日

ブラジル産業財産庁(INPI)行動計画2017が5月5日、発表された。知的財産権の審査遅延問題の解消が最優先目標として掲げられており、これを達成するためのさまざまな取り組みが数値目標とともに示されている。審査遅延に悩まされている日系企業も多いだけに、行動計画が実施され、ビジネス環境の改善が進むことが期待される。

特許と商標の審査官を増員

ブラジルでは知的財産に関する審査の遅延が大きな問題となっている。正確な統計はないが、出願してから審査の結果が出るまで、特許で10年以上、商標で2年以上かかるといわれている。産業界などは審査の遅延によってイノベーションや海外からの技術移転が妨げられているとして、早期に解決するよう政府に働き掛けている。

政府も審査遅延問題の重要性は認識しており、INPIを管轄するぺレイラ商工サービス相が2月に、「特許と商標の審査の迅速化は政府の優先事項」と明言している。実際、経済の低迷に伴う厳しい財政状況にもかかわらず、商工サービス省(MDIC)は1月に特許審査官30人と商標審査官40人を、4月には特許審査官50人と商標審査官20人を新規に採用するなど、審査体制を強化している。また、INPIも限られた予算や人的資源の中で、各種早期審査制度(ジェトロ「ブラジルにおける特許出願早期審査制度の現状についての調査」PDFファイル(740KB)参照)を導入し、審査遅延による出願人や国民への影響を和らげようと取り組んできたが、審査遅延問題に対する抜本的かつ総合的な対策は示されてこなかった。

数値目標とともに取り組みを列挙

そうした中、テーメル大統領、ぺレイラ商工サービス相、ピメンテルINPI長官が作成者として名を連ねるINPI行動計画2017外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが5月5日に発表された(注)。行動計画では審査遅延問題の解消が最優先目標として掲げられ、目標達成のための取り組みが数値目標を伴って示されている。

例えば特許審査に関しては、2017年の審査処理件数を2016年比60%増、2015年比93%増とし、特許審査官個人の審査処理量についても2015年比57%増とするとしている。また、商標審査に関しては、商標の新規登録に対する審査待ち期間を2016年比12%減、2015年比21%減とするとともに、2017年に23ヵ月に短縮し、2021年には商標の国際登録制度(マドリード協定議定書)の加入に必要な18ヵ月まで短縮する目標が掲げられている。さらに、海外との特許審査協力(特許審査ハイウエー)を推進することも明記されており、既に試行プログラムを開始している米国特許商標庁と日本の特許庁に加え、南米諸国の産業財産における地域協力システム(PROSUR)、欧州特許庁および中国国家知識産権局との特許審査ハイウエープロジェクトを開始することも目標として定められている。

(注)この行動計画には「2017」と付されているが、2016年版などはなく、今回が初めてとなる。

(岡本正紀)

(ブラジル)

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