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通商上の最優先課題はRCEPの妥結-マレーシア経済研究所の通商専門家に聞く-

(マレーシア)

クアラルンプール発

2017年05月18日

 米国が環太平洋パートナーシップ(TPP)協定からの離脱を表明したことで、マレーシア国内ではTPPに対する見方が変わってきた。通商協定や政策事情について詳しい、政府系シンクタンクであるマレーシア経済研究所(MIER)のシャンカラン・ナンビヤ上級研究員に、今後のマレーシア通商政策について考えを聞いた(5月4日)。

米国との2国間FTAは現実的でない

問:米国抜きの「TPP11」に対するマレーシア政府の立場、今後の通商政策に関する見方は。

答:マレーシア政府は米国とカナダへの市場アクセス拡大の果実を得るために交渉してきただけに、米国抜きのTPP協議に満足していないことは明らかだ。マレーシア政府のTPPへの関心は薄れており、TPPから脱退の可能性すら考えられる。通商上の主な便益は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)からもたらされよう。マレーシア政府は目立った便益を生まないTPPに参加し続けることに固執しないだろう。

米国のTPP離脱により、米国との2国間自由貿易協定(FTA)の締結は検討対象にはなるが、現実的ではないだろう。交渉が開始されても、米国政府から重たい要求を突き付けられることが想定されるためだ。

RCEPは妥結後の第2ステージで高度化を

問:RCEPの重要性は理解できるが、参加国数が多く、妥結は難しい。また、たとえ妥結しても自由化レベルは明らかにTPPよりも低く、マレーシアにTPPほどメリットはないように思えるが、この点はどうか。

答:参加国の利害が錯綜(さくそう)しているだけに、妥結までは簡単ではない。しかし、最低限の合意内容にとどめることができれば、スローペースながらもRCEPが形になり得るとみている。この進め方だと、RCEPが妥結できずに漂流するという事態は免れる。各種メディアは、RCEPが中国主導で形成される通商秩序と報道するが、実態はそうではない。同時に、ASEANのいかなる国もRCEP妥結のためにリーダーシップを取っていないことも現実だ。

RCEPの自由化レベルがTPPより低いという点については同感だ。RCEPは自由化レベル、参加国にとっての必要性という点では、敏感な問題もはらんでいる。しかし、RCEPにTPPのような高度なFTAという概念を持ち込めば、妥結は不可能となる。従って、まずはRCEPをとにかく妥結することが必要だと考えている。妥結後に第2ステージとして、RCEPの高度化を図ればいいと思っている。

FTAの普及には中小企業への周知が重要

問:TPPやRCEPなどFTA締結を進めるに当たっては、中小企業がメリットを享受できることが重要だと考えている。FTAに関する制度や手続きを、マレーシアでは中小企業に対し、周知できているか。

答:マレーシア経済研究所(MIER)は関連調査を過去に実施した。調査結果によると、FTAを理解し、実際に利用しているのは、クアラルンプール近郊のクランバレー地域とペナンに進出する多国籍企業がほとんどだった。両地域以外の中小企業はFTAを知らないとみていいだろう。FTAを知らなければ使えないので、中小企業は本来削減できるコストを負っている。

改善策として、国際貿易産業省(MITI)による、FTAに関する利害関係者が関わるロードショーやフォーラムの開催と、各種商工会議所や貿易関連団体向けの積極的な情報発信が求められる。これまでFTA利用によるメリットを中小企業に伝える努力はしてきたと思われるが、十分でないことは利用率の低迷からみても明らかだ。多国籍企業が容易に入手できるFTA利用の制度や手続きに関する情報は、中小企業にとっては入手が難しく、FTA利用拡大の足かせになっている。FTAに関わる情報を一元的に集約した窓口を設置し、FTAに関わる情報が中小企業に行き渡ることで、活用も増えていくとみられる。

なお、マレーシアのFTA発効・署名・交渉状況と貿易に占める構成比(2016年)は表のとおり。

表 マレーシアのFTA発効・署名・交渉状況および貿易に占める構成比

(新田浩之、エスター頼敏寧)

(マレーシア)

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