統一地方選挙は与党・保守党が圧勝-6月の総選挙の前哨戦-

(英国)

ロンドン発

2017年05月09日

 英国で統一地方選挙の投票が5月4日に行われた。6月の総選挙の前哨戦として行方が注目されたが、与党・保守党が議席全体の4割に迫る1,899議席を獲得する圧倒的勝利を収めた。一方で、最大野党・労働党は382議席を失い、国民がEU離脱を選択する原動力の1つともなった英国独立党(UKIP)も改選前議席のほとんどを失う結果となった。

保守党は改選前より563議席増に

統一地方選挙は、英国内88のカウンシル(地方行政区)の4,851の議席や、グレーター・マンチェスター、リバプールなどの首長の座をめぐって実施された。投票結果は表のとおりで、保守党が改選前より563議席の大幅増となる1,899議席を獲得、28のカウンシルで過半数を占めた。保守党は首長選挙でも、伝統的に労働党の地盤とされてきたウェスト・ミッドランドやティーズ・バレーで歴史的勝利を収め、党勢を拡大した。

主要政党の獲得議席数と増減(単位:議席、△はマイナス値)
政党名 議席数 増減
保守党 1,899 563
労働党 1,152 △ 382
ウェールズ党(プライド・カムリ) 202 33
自由民主党 441 △ 42
スコットランド独立党(SNP) 431 △ 7
緑の党 40 6
英国独立党(UKIP) 1 △ 145

(出所)BBC

一方で、労働党は382議席減の1,152議席となった。イングランド、スコットランド、ウェールズのいずれの地域でも100議席以上を失い、スコットランドでは第2党の座を保守党に明け渡した。ジェレミー・コービン党首の就任以来、党内分裂が続く同党だが、立て直しに厳しい現実が突き付けられた。

UKIPが壊滅的な敗北

また、EU離脱の是非を問う国民投票において離脱派が勝利を収める原動力の1つともなった英国独立党(UKIP)は、EU離脱選択後、党としての新たな存在意義が問われていたが、146議席から1議席へと壊滅的な敗北を喫することとなった。EU離脱に向けた厳しい交渉が予想される中、EU単一市場へのアクセスを求めるなどEU残留派の取り込みを図っている自由民主党も42議席減の441議席にとどまり、十分な支持を広げられていない現状が浮き彫りになった。

一方、スコットランドの英国からの独立を党是とするスコットランド独立党(SNP)は、431議席で改選前より7議席減となったものの、引き続きスコットランド地域での最大勢力としての地位を守った。また、ウェールズの英国からの独立を主張するウェールズ党(プライド・カムリ)は33議席増の202議席と躍進したが、ウェールズ地域の最大勢力の座には引き続き労働党が座る。

メイ首相は与党内の引き締め図る

今回の地方選挙は、6月8日に予定される議会総選挙の前哨戦として位置付けられていた。各種世論調査では保守党の優勢が伝えられており、地方選挙の結果はこの流れを加速させる可能性もあるが、テレーザ・メイ首相は「(総選挙での勝利を)当然のこととは考えていない」とコメントし、党内の引き締めを図った。一方、敗れた労働党のコービン党首は「議席は失ったものの、保守党との距離は縮まっている」とし、総選挙に向け強気の姿勢を示した。

各種報道をみると、今回の投票結果に基づいて総選挙を予想するのは時期尚早との見方が多い。BBC(5月5日)は、今回の統一地方選の結果では、6月8日の総選挙に関する最近の世論調査で示されるほどには労働党との差を示すことができなかった、と指摘している。また、デーリー・テレグラフ(電子版5月6日)は、今回の地方選挙が国内全てのカウンシルで行われたわけでないことや、投票率も総選挙に比べ低調な傾向にあることなどを挙げ、総選挙の行方は予断できない、としている。総選挙で保守党の優位は動かないものの、勝利するにしてもどの程度の差をつけて勝利を収めるのか、あるいは、野党の巻き返しがあるのかは、今後1ヵ月に及ぶ選挙戦に左右されそうだ。

(佐藤央樹)

(英国)

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