太陽光発電に関する首相決定を公布、6月1日施行

(ベトナム)

ハノイ発

2017年05月31日

 政府は4月11日付で、太陽光発電の固定買い取り価格や優遇措置などを定めた首相決定11/2017/QD-TTg号(首相決定11号)を公布した。施行は6月1日で、2019年6月30日までの時限立法となっている。

政府は再生可能エネルギー活用を推進

政府は再生可能エネルギーの活用を推進しており、2016年3月に改定した第7次国家電力マスタープラン(PDP7)では、2030年時点の発電設備容量に占める再生可能エネルギーの割合を21.0%と、改定前の9.4%から大きく上方修正した。

再生可能エネルギーに関する法令としては、風力(首相決定37/2011/QD-TTg)、バイオマス(首相決定24/2014/QD-TTg)、廃棄物(首相決定31/2014/QD-TTg)が施行されており、太陽光に関しても、再生可能エネルギービジネスに関心のある国内外企業から、関連法令の公布と内容が注目されていた。

固定買い取り価格は1キロワット時9.35セント

首相決定11号によると、「固定価格買い取り制度(FIT:Feed in Tariff )」が導入され、太陽光発電の固定買い取り価格は、1キロワット時(kWh)当たり9.35セント(2,086ドン)となった。有効期限は20年で、期限終了後の売買契約の延長もしくは別途新たな契約を締結することも可能となる。ベトナム電力公社(EVN)またはEVNが認可した事業体が、発電された電力の全てを購入する責任を負うこととなっている。

また、国家送電網に接続(系統接続)される発電所案件では、セル変換効率(注1)16%以上、またはモジュール変換効率(注2)15%以上がFITでの買い取り条件となる。一方、工場や家庭などで利用されるルーフトップ型では、自家消費分を除く余剰電力を売電できる「ネットメータリング制度」が導入される。余剰電力は次回取引(翌月など)に繰り越し、年末もしくは契約終了時に余剰分の全てをFITで売電することとなる。

税優遇については、太陽光発電の設備に必要で、現地で生産されていない材料、資材、および半製品の輸入関税が対象となり、法人税は現行法に準拠した優遇となる。また、発電所、系統接続、変電所工事など、太陽光発電に関連した土地の使用料やリース料は減免され、省級人民委員会が土地収用に係る支援を行うとされている。

日系企業からは「様子見」の声も

現地日系企業の間でも、再生可能エネルギービジネスへの関心は高いものの、買い取り価格が、商工省から提案されていた1kwh当たり11.2セントを下回ったことから、「ビジネスになるのか検討したい」(日系電力関連企業)、「買い取り価格が10セントを下回ると利益が出ないため、しばらく様子を見たい」(日系商社)などの声が聞かれた

政府系研究機関によると、再生可能エネルギーのうち風力発電や太陽光発電は、風が強い地域や日照時間が長い中部や南部地域が適しているという。4月24日に南部メコンデルタのチャビン省を訪問したグエン・スアン・フック首相は、同省の活性化のために「風力発電や太陽光発電などを徹底して活用すること」を提案している。

(注1)ソーラーパネルの最小単位(セル)において、太陽光エネルギーが電力に変換される割合。

(注2)ソーラーパネル1枚当たりの太陽光エネルギーが電力に変換される割合。

(佐藤進)

(ベトナム)

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