ノースカロライナなど4州と首都で相次ぎ法人税率引き下げ-民間税制調査機関が報告書-

(米国)

ニューヨーク発

2017年05月16日

 民間の税制調査機関タックス・ファウンデーションは、2017年の全米各州における法人所得税の課税状況をまとめた報告書を発表した。ノースカロライナ州など4州と首都ワシントンで法人所得税引き下げの動きが相次いでいる。

州ごとの法人所得税率は3~12%

米国における税制は、連邦レベルと州レベル(地方自治体などを含む)に分かれ、税目をはじめ、税率、課税対象範囲、税額の計算方法などが異なる。従って、米国で事業を展開するに当たっては、内国歳入法による連邦税制のみならず、各州固有の税法による地方税制にも留意する必要がある。なお、州レベルでの税目としては、法人所得税のほかに売上税、固定資産税などがある。

タックス・ファウンデーションが2月27日に発表した報告書によると、法人所得税を賦課している44州の税率は、一番低いノースカロライナ州の3%から一番高いアイオワ州の12%までとなっている。アラスカ、コネチカット、アイオワ、ミネソタ、ニュージャージー、ペンシルベニアの6州と首都ワシントンでは9%以上の税率が課されている。一方、アリゾナ、ノースカロライナ、ノースダコタ、コロラド、ミシシッピ、サウスカロライナ、ユタの7州では5%以下の税率となっている。

また、法人所得税を賦課していない州は全米で6州ある。そのうち、ネバダ、オハイオ、テキサス、ワシントンの4州においては、所得を課税標準としない総収入税(gross receipts tax)形式の法人税がある。例えば、テキサス州では「フランチャイズ税」として、同州で設立されたり、事業を行ったりしている法人を対象として、一定の方法で計算された粗利益(margin)に対して、同州での総収入(gross receipts in Texas)を全体の総収入(gross receipts everywhere)で割った案分率および税率0.75%(小売・卸売業種は0.375%)を乗じるなどして算出された額が課税されている。このほか、サウスダコタ、ワイオミングの2州では、法人所得税も総収入税形式の法人税も賦課されていない。タックス・ファウンデーションは「課税制度がないことは、コスト面に加えて、納税手続きの事務負担軽減や想定外の課税リスクの回避といった観点からもメリットがある」と指摘している。

ノースカロライナ州は4年前の半分以下に

タックス・ファウンデーションは、2016年末から2017年における州法人所得税に関する主な動きとして、以下の税率の引き下げ事例を挙げている。

ノースカロライナ州では、2013年から2017年までの包括的な税制改革パッケージに基づき、2017年1月1日に法人所得税率が4%から3%に引き下げられた。これにより、2013年は6.9%だった税率は半分以下の水準となった。これは、法人所得税を賦課している州の中で最低税率となっている。

アリゾナ州では、2016年12月31日に税率が5.5%から4.9%に引き下げられた。これは、2015年から始まった税率引き下げの最終段階とされている。

ニューメキシコ州では、2017年1月1日に税率が6.6%から6.2%に引き下げられたが、一方で課税ベースの拡大も行われている。なお、2018年には5.9%まで引き下げられることが予定されている。

インディアナ州では、7月1日に税率が6.25%から6%に引き下げられる。同州では、2011年に8.5%だった税率が段階的に引き下げられており、最終的には、2021年7月に4.9%まで引き下げられることが予定されている。

首都ワシントンでは、2014年の税制改革パッケージに基づき、2017年1月1日に税率が9.2%から9%に引き下げられた。また、今後の税収予測次第では、さらなる減税措置の実施も予定されている。

なお、連邦レベルの法人所得税は企業収入に応じて8段階に分けられ、15~39%の税率が州法人所得税とは別に課される。

(渕上茂信)

(米国)

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