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2018年導入予定の雇用保険制度、首相が7,000万リンギ拠出を表明-日系企業などは労務費の増大を懸念-

(マレーシア)

クアラルンプール発

2017年05月26日

 ナジブ首相は5月1日のメーデーに行った演説で、2018年1月に導入予定の雇用保険制度に7,000万リンギ(約18億2,000万円、1リンギ=約26円)を拠出することを発表した。同制度では650万人の労働者が失業後に財政支援を受けることができるが、日系企業をはじめビジネス界は保険料の拠出に伴う労務費の増加を懸念している。

ナジブ政権で導入の動きが本格化

雇用保険制度(EIS:Employment Insurance System)は2018年1月1日に導入が予定されており、ナジブ首相は2017年のメーデーの日に、EISの運用機関である社会保障機構(SOCSO)に資金を拠出することを発表した。EISによって、国内の民間企業で働く650万人の労働者は、失業してから再就職するまで自身と家族が財政支援を一時的に受けることが可能になる。また求職支援、就職フェア、キャリア相談や職業訓練などのサービスもEISから受けることができる。

政府は雇用保険について、ILOの調査を受けて2000年代から導入を検討していたが、2009年にナジブ政権が発足してから動きが本格化した。ナジブ首相は2017年3月、「EIS関連の法案を6月に提出し、2018年1月1日の施行、2019年1月1日から実際の給付を始める」と、具体的な流れに言及していた。

保険料率は法案可決後に発表

人的資源省(MOHR)が4月13日に開催した雇用保険に関する対話集会で、EISの詳細がみえてきた。この中で、MOHRは雇用保険システムの目的を(1)失業者の収入源確保、(2)失業者の雇用促進、(3)労働力の適切な供給、(4)労働力の確保と安定にあるとした。受給対象者は賃金に関係なく全ての労働者とし、受給資格要件は24ヵ月中最低12ヵ月雇用保険に加入していた失業者としつつ、自己都合退職、契約期間の満了、不正行為を行って解雇された労働者、定年退職した人間は除外するとした。

注目の拠出率(保険料率)の詳細については、現時点で公式発表はない。EIS法案が議会で可決された後、政府から正式に発表される予定だ。なお各種報道によると、拠出率は0.5%で、雇用者0.25%、被雇用者0.25%の均等負担とされている。MOHRによると、雇用者の事業縮小のための失業、早期退職制度を利用した退職、自然災害など不可抗力な理由による失業、雇用者の倒産などで失業した場合、政府からは就職相談、求職手当、早期再就職手当、職業訓練手当、職業訓練費用、収入減額手当といった社会保障給付を受けることができる。例えば、求職手当については、案の段階では保険加入月に応じて受け取る回数が決められている(表参照)。

求職手当(JSA:Job Search Allowance)受給額例(案)(単位:リンギ、―は給付無し)
賃金 加入期間 (月) 受給回数(回) 受給額
1回目
80%
2回目
50%
3回目
40%
4回目
40%
5回目
30%
6回目
30%
2,000 12 3 1,600 1,000 800 3,400
16 4 1,600 1,000 800 800 4,200
20 5 1,600 1,000 800 800 600 4,800
24 6 1,600 1,000 800 800 600 600 5,400
4,000 12 3 3,200 2,000 1,600 6,800
16 4 3,200 2,000 1,600 1,600 8,400
20 5 3,200 2,000 1,600 1,600 1,200 9,600
24 6 3,200 2,000 1,600 1,600 1,200 1,200 10,800

(出所)人的資源省(MOHR)

経済界は解雇手当との二重負担を懸念

EISの導入については、これまでも地場、外資含めて各種経済団体は反対あるいは制度の改定を求めてきた。導入後の失業者が導入前の2倍になったEIS導入国もあることから、EISはむしろ企業に一時解雇(レイオフ)を奨励しているようにもみえ、本来の労働者保護の趣旨とは懸け離れた結果になりはしないか懸念されている。そもそもEISは企業サイドに負担を課すだけでメリットがないという意見もある。マレーシアを代表する経済団体のマレーシア雇用者連盟(MEF)は「アジア通貨危機時でさえ、解雇手当をもらえず解雇された労働者は労働力人口の0.03%にすぎず、保険の導入は不要」と訴えていた。

日系企業もEIS導入については労務費の増加になると懸念している。これまで従業員を解雇せざるを得ない場合は、法律にのっとって解雇手当を払ってきた経緯がある。EISの導入は、解雇手当を払わず撤退してしまう企業で働く従業員へのセーフティーネットの意味合いもある。しかし、労働法制を順守してきた日系企業からすれば、従業員の解雇の際に、これまでの解雇手当に加えて雇用保険への拠出も求められることとなり、二重の負担を納得できない面もある。景気が減速する中での最低賃金の引き上げ、良質な人材採用の困難さに加えて、外国人労働者雇用に課される人頭税(レビー)の雇用者負担も検討が進む中、これ以上の労務費の拡大は、マレーシアでの事業運営の継続そのものを難しくさせかねないと警戒感が高まっている。

(新田浩之)

(マレーシア)

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