「東部経済回廊」に日系企業は高い関心-ジェトロと日本大使館が緊急アンケート調査-

(タイ)

バンコク発

2017年05月16日

 ジェトロは4月27日から5月3日にかけて、在タイ日本大使館と共同で、日系企業に対しタイ政府が注力する「東部経済回廊(EEC)」に関する緊急のアンケート調査を実施した。回答があった日系企業の多くはEECの投資優遇政策への関心が高いことや、EEC内で新たな投資を検討している企業があることも分かった。

回答企業の多くがEECに進出

タイ政府は、産業の高度化・高付加価値化を図り、持続可能な成長を目指すビジョン「タイランド4.0」を進展させるため、チャチュンサオ、チョンブリー、ラヨーンの東部3県を東部経済回廊(EEC:Eastern Economic Corridor)に指定し、次世代自動車や航空関連、デジタル、先進的食品など10分野の産業誘致に力を入れている。

ジェトロ・バンコク事務所は、タイ国内で関心が高まっているEECに関する在タイ日系企業の動向を把握し、EECにおける投資環境の改善を目的に、在タイ日本大使館と共同で「EECに関する緊急アンケート調査」を実施した。対象は盤谷日本人商工会議所の理事企業など48社で、メールで調査票を配布し、計28社(製造業関連18社、その他10社)から回答を得た。

回答があった28社のうち、既にEECに進出している企業は24社(製造業関連16社、その他8社)、このうちEEC内の事業所の従業員数がタイ全体の従業員数の過半を占める企業は9社(製造業関連8社、その他1社)だった。またEEC内の事業所を、広域戦略上重要と位置付けている企業は15社(製造業関連11社、その他4社)あり、EECに進出している日系企業はEECを重要地域の1つと捉えていることが明らかになった。EEC内で投資を拡大する予定(検討中も含む)と回答した企業は10社(製造業関連7社、その他3社)で、今後も日系企業によるEEC内での一定の投資が見込まれる。ただし、投資の予定がない企業も18社あった。

投資優遇政策を効果的と評価

タイ政府が打ち出しているEECの投資優遇政策は効果的かどうか聞いたところ、22社が効果的だとした。そのうち、ほとんどの企業が「最長15年にわたる法人税の免除」や「免除後、5年にわたる法人税の50%減免」を効果的と回答した。また、物流の効率化(渋滞の減少)が図られることから、「レムチャバン港やウタパオ空港の整備」や「バンコク~ラヨーン間の高速鉄道の建設」などEECで予定されているインフラ投資についても効果的とする企業が多かった。さらに、「許認可手続きの緩和や行政手続きの迅速化」「外貨建て決済の許可」などソフト面の改善も効果的との意見もあり、全般的には「他国の投資優遇政策と比べても十分インパクトがある」と肯定的な意見が多数を占めた。

しかし、タイ政府の政策は効果的と回答した企業からも、「以前発生した歳入庁とタイ投資委員会(BOI)との法人税の繰越欠損金に対する見解の相違のような事例が発生しないよう、しっかりした法整備を求めたい」といった注文があった。同様に、「実際のタイ政府の運用をみないと投資判断の決断は難しい」「政府の本プロジェクトへのより強いコミットメントを期待する」「タイ政府の資金で主要なインフラ開発を行うべき」「タイ政府は投資家に対して、長期的な政策の実効性を担保する必要がある」など、政府のプロジェクトへの積極的な関与や政策の実効性を求める意見も多くあった。

加えて、「先進産業を支えるタイ人高度人材の育成」「進出企業のビジネス活動を支える人材育成」「高度人材獲得のための政策」「企業だけでなく誘致主体側も魅力的な研究開発環境を整えること」「研究開発(R&D)全体の移管に関して、タイでの研究者、エンジニアの質、流動性などを強化すべし」といった、人材の高度化に必要な政策を求める意見もみられた。

そのほかにも、「既に継続的にEEC内に投資を行ってきた企業に対しては、新規プロジェクトのみならず過去の実績に応じて恩典を付与してほしい」といった声や、EEC内に拠点がない企業からも、「長期にわたり(タイ国内で)大型投資を継続してきた企業に対しても、何らかの優遇策(税制など)を検討すべき」との意見があった。

なお、ジェトロはBOIと共催で、ソムキット副首相(経済担当)や関係3閣僚を迎え、6月7日に「タイ投資シンポジウム」を東京で開催する。そこでも、タイ政府からEECに関する詳細な説明がある予定だ。

(阿部桂三)

(タイ)

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