国務院常務会議、3,800億元規模の減税策を決定-経営環境を最適化、イノベーション力強化を狙う-

(中国)

北京発

2017年05月15日

 政府は4月19日に国務院常務会議を開催し、減税のさらなる推進や、実体経済のコストを引き続き引き下げることなどを決めた。増値税税率の簡素化、小規模低利益企業の企業所得税優遇範囲の拡大、ハイテク型中小企業の研究開発費の損金追加控除の比率引き上げなど、総額3,800億元(約6兆800億円、1元=約16円)規模の6つの減税措置に取り組む。

サプライサイドの構造改革を深化

李克強首相が主宰する国務院常務会議が4月19日に開催され、減税をさらに推進し、実体経済のコストを引き続き引き下げることなどが決められた。2015年12月に開催された、翌年の経済政策の方向性を決定する中国共産党の重要会議である中央経済工作会議で、供給側(サプライサイド)の構造改革に力を入れて取り組むことが決められ、その5大任務の1つに企業コストの低減が盛り込まれた。2016年に取り組みは進展したが、2017年はサプライサイドの構造改革を深化する年として、3月の政府活動報告でもさまざまな措置を講じて企業のコストを低減することなどが盛り込まれた(2017年3月21日記事参照)。同報告では、年間で企業の税負担を約3,500億元、企業からの各種料金などの徴収を約2,000億元減らし、企業にその効果を実感してもらう必要があるとしていた。

今回の国務院常務会議では、この政府活動報告に基づき税制改革を深化させ、減税を拡大し、企業の負担を絶えず軽減することが、サプライサイドの構造改革を推進する重要な措置であり、国内外の経済情勢が複雑で、不安定・不確定な要素が依然多い中、経営環境を最適化することで企業の活力やイノベーション力を強化するとした。そして、2017年第1四半期は、既に2,000億元のコスト引き下げ措置を発表したが、それを基にさらに減税を進めるとした。

増値税率を17%、11%、6%の3分類に

具体的には以下の6つの措置に取り組むとしており、2017年通年で3,800億元余りの減税につながるとしている。

第1に、増値税の税率を簡素化する。7月1日から、現在の4分類(17%、13%、11%、6%)を17%、11%、6%の3分類にし、13%に分類されていた品目は、11%の増値税率が適用される。現在は食糧作物、食用植物油、水道水、スチーム、冷気、熱水、ガス、図書、新聞、雑誌、飼料、肥料、農業用機械、農薬、農業用ビニールなどに13%の増値税率が適用されている。

第2に、小規模低利益企業の企業所得税優遇範囲を拡大する。1月1日にさかのぼって2019年12月31日までの措置となる。従来は年間課税所得が30万元以下の企業には、課税所得を半減した上で20%の優遇税率を適用してきたが、この対象を50万元以下の企業に拡大する。

第3に、ハイテク型中小企業の研究開発費の損金追加控除の比率を引き上げる。1月1日にさかのぼって2019年12月31日までの措置となる。現在は、研究開発費用の実額に加えて開発費の50%を損金算入できるが、ハイテク型中小企業が新技術、新製品、新工程を開発するための研究開発費用については、追加の損金算入比率を75%へ引き上げる。

第4に、京津冀(北京市・天津市・河北省)、上海、広東、安徽、四川、武漢、西安、瀋陽の8つの全面イノベーション改革試験地域と蘇州工業園区において、1月1日から、起業準備期、設立初期の科学技術型企業へのベンチャー投資については投資額の70%を課税所得から控除する優遇措置を実施しているが、7月1日からは、企業を主体とするベンチャー投資だけでなく個人のベンチャー投資にも優遇措置を拡大する。

第5に、7月1日から商業健康保険(民間の医療保険)の個人所得税の控除モデルを全国に拡大する。現在は4つの直轄市などにおいて、条件を満たす個人が商業健康保険を購入する場合、毎年2,400元まで課税所得から控除できる。

第6に、2016年末で期限を迎えた一部の税制優遇を2019年末まで延長する。例えば、物流企業が大口商品の倉庫として使用している土地に対する都市部土地使用税の半減措置などがある。

この決定を受け、今後、各部門が具体的な政策規定を発表していくとみられ、その動向を注視していく必要があるだろう。

(宗金建志)

(中国)

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