ダイキン・ヨーロッパ、冷媒の変更で環境負荷を低減

(EU)

ブリュッセル発

2017年05月17日

 欧州では、生産~消費~廃棄物の管理~廃棄物の資源化という循環を促進し、資源を活用しながら経済成長に貢献し、環境対策に取り組む「循環型経済(サーキュラー・エコノミー)」実現に向けた取り組みが、民間企業の間でも進められている。欧州に販売と製造の両拠点を持つ、ダイキン・ヨーロッパ環境リサーチセンターの山口貴弘氏とステファーン・バンダーストラーテン氏に、循環型経済に適応した取り組みについて聞いた(3月7日)。

循環型経済に向けた取り組み

世界中で空調・冷凍機の生産・販売を行っているダイキン工業は、欧州ではベルギーを欧州拠点(製造を含む)とし、チェコやドイツにも製造拠点を持つ。

山口氏によると、同社のビジネスに必須な冷媒の使用を中心に、環境に関する取り組みを行っているという。例えば同社は、日本冷凍空調工業会と協力して「地球温暖化係数(GWP)」(注)の高いR410Aをはじめとするハイドロフルオロカーボン(HFC)の使用量削減を目指し、環境負荷のより少ない冷媒であるR32への切り替えを2012年に開始した。その結果、切り替えが行われた同社製品に使用する冷媒のGWPは切り替え前の約3分の1になった。さらに、製品当たりの冷媒の使用量を減らすことにより、温暖化への影響は4分の1程度になる見込みだ。同社は現在、冷媒R32を使用した製品の展開を欧州でも進めている。

一方で、GWPが低い冷媒に共通した特徴として、冷媒の「微燃性」が挙げられ、微燃性冷媒に関する規格・規制がないことが課題になっている。微燃性とは、燃焼しても爆発燃焼は生じないものの、化学的には「燃える」ものを指す。これまでは、冷媒の微燃性に関して、明確な管理方法などが設定されていなかった。同社は、(1)微燃性という燃焼性の定義を国際標準で明確化する、(2)微燃性冷媒の使用規格を確立する、(3)冷媒の微燃性に対応した各国の法規制(建築基準法や消防法)の見直しを促す、などの活動を行っているという。国際標準化機構(ISO)などの国際規格は、欧州の規制に与える影響力も大きく、このような規格に働き掛けるダイキン・ヨーロッパの活動で、同社グループ全体の戦略が成り立っているといっても過言ではない。

英国では使用済み製品の回収も実施

バンダーストラーテン氏によると、同社は地域単位の取り組みも行っているという。例えば、ダイキンの製品は通常、設備事業者によって設置ならびに取り外し・回収されるが、英国では2011年ごろから、使用済み製品を回収しその後、同社が責任を持って廃棄処理事業者に引き渡す取り組みを開始している。しかし、欧州全体でこの英国のような取り組みが実施できていない。その背景として、イタリア、スペイン、ポルトガルなど一部の国では、使用済み設備の回収・輸送に関する法律が個別にあり、必要書類の用意など、各国で異なる対応が必要なことがある。

ダイキン・ヨーロッパでは、一部の製品に関して、リースによる販売を検討しているものの、(1)製品を迅速に回収するに当たって各国で廃棄物に関する定義が異なる、(2)各国で建物に設置される製品に対して異なる法律がある、など各国の定義や法規の違いがリース販売展開の制約となっている。

EUでは現在、エコデザイン指令に、リペアビリティー(修理しやすさ)や耐久性などの新しい要件を追加する動きがある。このような傾向に対して、ダイキンは、省エネ性能や、RoHSやREACHなど有害物質の使用に関する規制、冷媒に係る規制など、各種の規制との調和が重要になるとみている。

(注)二酸化炭素を基準にして、どれだけ温室効果に影響を与えるかを示す係数。

(大中登紀子)

(EU)

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