環境・エネルギー技術分野の交流促進-「グリーン・ベンチャーズ」にパートナーカントリーとして参加-

(ドイツ、日本)

ベルリン発

2017年05月19日

 ドイツ東部のライプチヒで4月に開催された環境・エネルギー技術の国際協力フォーラム「グリーン・ベンチャーズ2017」では、日本が初めてパートナーカントリーとなった。イベントを共催したジェトロはミッションを派遣し、セミナー、個別面談、再生可能エネルギーの最新技術を活用するドイツ企業の視察などを実施した。

欧州内外から企業・機関が集結

ジェトロとポツダム商工会議所(IHKポツダム)は4月5~7日、ライプチヒ市、ザクセン州環境・農業省などと協力し、見本市会場のライプチヒ・メッセで環境・エネルギー技術の国際協力フォーラム「グリーン・ベンチャーズ2017」(「Green Ventures 2017」)を共催した。ドイツ東部のライプチヒとポツダムで毎年交互に開催される本イベントには約30ヵ国・地域から約200社の企業、官公庁、研究機関などが参加し、セミナー、商談会、企業視察などが実施される。今回は20周年を迎え、日本が初めてパートナーカントリーとなった。対象分野は、上下水処理、配水、空気清浄、土壌浄化、エネルギー計画、エネルギー生産・配給、省エネ、再生可能エネルギー、熱利用、断熱、環境配慮型建築、デザイン、リフォーム(修復)、ファシリティーマネジメント、IT、廃棄物の回収・運搬・再利用・堆肥化、再生可能な素材、生分解性素材など。

ポツダムを州都とするブランデンブルク州や展示会に関して850年の歴史があるライプチヒが所在するザクセン州近郊には、環境・エネルギー分野に優れた中堅・中小企業が多い。例えば、ザクセン州のレルマ・インターナショナルは、リサイクルで回収したプラスチックから建材を生産しており、耐久性に優れ、化合物、酸性雨、アルカリ溶液に強いとして、ドイツ学術界からも高い評価を得ている。また、リヒター・アンド・ヘス・フェアパックングス・サービスは、ドイツ最大の応用研究機関フラウンホーファーのエレクトロ・ナノシステム研究所と共同で、段ボールへのアンテナ・電池の印刷技術を開発している。同社は、これまでジェトロ支援によるザクセン州と山形県米沢市との地域間交流支援事業(RIT)に参加し、2017年2月に米沢市を訪問、協力に向けた交流を進めている。

写真 ライプチヒ・メッセで開催された「グリーン・ベンチャーズ」(IHKポツダム提供)

「ソサエティー5.0」の重要性を追求

日本に関する記念式典には八木毅・駐ドイツ大使が出席し、3月にハノーバーで開催された世界最大級のIoT(モノのインターネット)見本市「CeBIT 2017」(2017年4月12日記事参照)に引き続きパートナーカントリーとなったことで、「グリーン・ベンチャーズ」が日本とドイツの中堅・中小企業同士、地域間交流をより発展させていく新たな機会になると強調した。

ジェトロはIHKポツダムとの2001年から続く協力関係に基づき、日本国内と欧州域内のネットワークを通じて日本関係の企業・機関に参加を呼び掛け、15社から成る視察団を編成した。各社はセミナー、個別面談、同じ会場で併催された環境・エネルギー見本市「テラテック2017」視察、ライプチヒ近郊の企業見学ツアーの各プログラムを選択し、世界から集まった企業と積極的に交流を図った。近年、環境・エネルギー分野でも重要テーマであるIoTの先進地域フィンランドの企業の参加も増えている。さらに、ドイツ経済協力開発省による新興国支援を背景に、環境・エネルギー分野の最新技術の情報を必要とするアフリカの企業や機関も参加、第三国とのネットワーク構築も可能になっている。

日本の環境・エネルギー市場の動向をテーマとしたセミナーでは、ジェトロから「CeBIT 2017」でのパートナーカントリーとしての経験や米沢市とザクセン州とのRIT、対日投資支援サービスなどを説明した。「CeBIT2017」では、モノがつながり技術が融合することでイノベーションが社会的課題を解決する持続可能な社会「ソサエティー5.0」を安倍晋三首相がアンゲラ・メルケル首相に提唱したが、「グリーン・ベンチャーズ」を機に日独企業が得意とする環境・エネルギー分野の技術交流を行うことで「ソサエティー5.0」の実現に貢献し得ることを訴えた。

ドイツ企業からは、日独の環境・エネルギー事情に精通するエコス(ECOS)プロジェクトマネージャーのロルフ・フォブカー氏と、北海道でバイオマス発電による分散型電源導入実績がある2Gエネルギー(2G Energy)国際営業担当のオザン・ゼビンチ氏が登壇。また、ベルリン日本商工会事務局長の志智泰次氏がベルリンにおける日独企業の交流行事などについて紹介した。

写真 会場では各国の環境・エネルギー分野の企業・機関が交流した(ジェトロ撮影)

DHLとポルシェの最新設備を視察

日本の視察団は、最新の環境・エネルギー技術を利用しているライプチヒ・ハレ空港に立地するドイツ物流大手DHLの欧州ハブ拠点とポルシェの工場を視察した。DHLの拠点では世界向けの貨物物流を手掛けており、設備の電力には太陽光や雨水から得られる再生可能エネルギーを積極的に利用している。

ポルシェの拠点では米国、中国、ドイツといった主要市場のほか、日本市場向けにも「マカン」「カイエン」「パナメーラ」が組み立てられている。生産現場では「カイゼン」方式が取り入れられていると同時に、産業用ロボット導入による自動化が進みつつあり、車体製造では太陽光発電エネルギーを利用している。また、溶接ロボット向けの冷却システムにより年間36万5,000キロワット時(kWh)のエネルギーを節約し、エネルギー効率化を図っているという。

日本から参加したLIXIL国際標準化推進室長の長谷川鉄朗氏は「当社が手掛ける水処理技術の分野を中心に、欧州域内の情報収集を目的に参加した。環境先進国といわれるドイツで現地の企業とも意見交換ができ、有益な機会だった」と話した。IHKポツダム地域経済政策イノベーション・環境プロジェクトディレクターのトルステン・シュテア氏は、「日本がパートナーカントリーとなったことで、参加者間の交流が非常に活発となった。今後、当商工会に所属する環境・エネルギー分野の企業を中心とする訪日ミッションを計画しており、日本企業との長期的な関係を構築していきたい」と語った。

(小菅宏幸、マリナ・リースラント、増田仁)

(ドイツ、日本)

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