シタラマン商工相の初来日を機にインド投資セミナー

(インド)

アジア大洋州課

2017年04月28日

 ジェトロは4月14日、東京で在日インド大使館などとともに、「インド投資ビジネスセミナー」を開催した。今回のセミナーはインドのニルマラ・シタラマン商工相の初来日を機に開催されたもので、インド投資に関心を寄せる日本企業関係者ら約200人が参加した。同相からは、2000年以降のインド向け対内直接投資の累積額で、日本が3位になったことなどが披露された。

セミナーには日系企業関係者ら約200人が参加

シタラマン氏は、2017年5月で丸3年を迎えるモディ政権の発足当初から商工相を務めており、今回が初来日となった。ジェトロはこの機会を捉え、4月14日にインド投資ビジネスセミナーを東京で開催した。セミナーには、インド投資を考える日本企業などから約200人の参加があった。

写真 インド投資ビジネスセミナーの様子(ジェトロ撮影)

格段に広く、深くなる日印関係

セミナーの冒頭であいさつをしたジェトロの石毛博行理事長は「世界の新興国の景気が減速する中、経済成長率7%を誇るインド経済にあらためて注目が集まっている」とし、物品・サービス税(GST)の導入など、長期的なインドの国づくりに必要な経済改革に信念をもって取り組むモディ首相の強い姿勢を評価。「インドは変化のスピードを上げているが、『日本とインドの関係』も格段に広く深いものとなってきている」とした。

続いてあいさつしたインド工業連盟(CII)のチャンドラジット・バナジー事務局長は「これまでは日本企業からインドの税制の複雑さに対する指摘や不満などを耳にしてきたが、最近ではモディ首相の経済改革に対する評価も聞かれるようになった。インドの経済改革は今まさに進行中だ」と述べた。

基調講演に立ったシタラマン商工相は日本とインドの貿易・投資関係を振り返り、「2000年以降のインド向け対内直接投資の累積額は、日本がモーリシャス、シンガポールに次ぐ3位になった。これは両国の産業界が長年にわたって関係構築を続けてきた努力のたまものだ」と語った。一方で、「日・インド包括的経済連携協定(CEPA)は発効から間もなく6年を迎えるが、十分に活用されていない。特に、インドから日本向けの輸出が伸び悩んでいる」と指摘した。日印CEPAの有効活用に向け、インド開発途上国研究情報システムセンター(RIS)など政府系シンクタンクを中心に、インド側の輸出者に対して日本企業の調達方針や日本の輸入規制などの情報を提供する取り組みを始めるとした。「現在、インドでは多くの経済改革が進行している。今日、われわれが説明できたのはその一部分にすぎない。ぜひインドに来て、自分の目で今のインドを確かめてほしい」と述べて講演を締めくくった。

中小企業誘致へ地場企業とのパートナーシップも

セミナーの後半では、インド政府高官や関係機関のトップらをパネリストに、「メーク・イン・インディア」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。ここでは、税制改革、知的財産権保護、物流の円滑化、インフラ整備などについて、投資環境改善に向けた意見交換が行われた。

CIIのナウシャド・フォーブス会長は、日本の中小企業のインド進出が伸び悩んでいることに触れ、「インドには日本の大企業が多数進出している。今後は独自の技術を持った日本の中小企業のインド進出を促したい。もし、単独での進出に不安を感じるのであれば、地場企業とのパートナーシップも有効だ」と語った。インド商工省のラメッシュ・アビシェック次官は「日本企業専門の投資支援窓口として、商工省傘下にジャパン・プラスがある。各州政府も投資誘致窓口を設け、個別のインセンティブなども用意している。中央政府と州政府のサポートを一体的に活用いただきたい」と呼び掛けた。

セミナーに参加した日本企業からは、商工相をはじめとしたインド政府の要人からインドの投資環境や政府の方針などの話を直接聞けたことを評価する声が多かった。一方で、「インドに投資を受け入れる姿勢があることは分かったが、実際に投資環境が整っているかというと、それは別問題。不十分な点を認め、その対処法を議論した方が現実味が増す」とする指摘もあった。

(西澤知史、北見創)

(インド)

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