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ブレグジット後のユーロ中央決済機能の在り方に言及-欧州委副委員長、マルタのセミナー講演で-

(EU、英国、マルタ)

ブリュッセル発

2017年04月10日

欧州委員会のバルディス・ドムブロフスキス副委員長(ユーロ・社会的対話、金融安定・金融サービス・資本市場同盟担当)は4月6日、マルタで開催した金融・財務専門家向けセミナーで基調講演に立ち、「欧州最大の金融センターが単一市場から離脱することが明らかとなった」と英国のEU離脱(ブレグジット)問題に言及。「EU27ヵ国として、資本市場同盟の形成を急ぐべきだ」と指摘した。また、ユーロ建てデリバティブ(金融派生商品)取引決済実務の大半がロンドンに集中している現状を課題として取り上げ、今後はEU域内での対応強化の必要性を示唆した。

欧州経済の現状に自信示す

欧州委のドムブロフスキス副委員長は4月6日、2017年上半期(1~6月)のEU議長国を務めているマルタの首都バレッタで開催された金融・財務専門家向けのハイレベルセミナー(主催:欧州の金融産業と金融当局の交流のための非営利組織「ユーロフィ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」)で「欧州の財務・金融の見通し」をテーマに基調講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

冒頭、ドムブロフスキス副委員長は「欧州経済が回復基調にある時期に、この場に立てて良かった」「ユーロ圏の実質GDP成長率は15四半期連続のプラスとなり、雇用もしっかりしたペースで拡大している」と語り、欧州経済の現状に自信を示した。

欧州委の最新の予測によると、EUの実質GDP成長率は2017年、2018年ともに1.8%の見通しで、このことが、欧州委としての「投資活性化」「構造改革」「責任ある財政政策」への取り組みが奏功している証左だ、と指摘した。ただし、一部のEU加盟国には依然として公的部門・民間部門ともに高水準の債務問題が残り、先行きの不透明感は払拭(ふっしょく)されていない、との認識も示した。その結果、多くのEU市民が経済回復を実感できていない状況にあり、依然として経済格差にも直面している、と語った。

ブレグジット乗り切りへ資本市場同盟の形成を急ぐ必要

同副委員長は、EUの財政・金融の視点で、これらの問題を解決する「処方箋」として、a.欧州の金融部門の脆弱(ぜいじゃく)性の主要因となっている不良債権問題への本格的な対応、b.金融市場を安定・成長に導く資本市場同盟外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(Capital Markets Union:CMU)の加速、c.これらの取り組みを支えるための金融規制の枠組み整備、の重要性を述べた。不良債権問題については、欧州債務危機の経験を念頭に、「今、不良債権処理の手を緩めれば、次の10年をその処理に費やすことになる」と警鐘を鳴らした。

同副委員長は講演の中で、欧州経済を取り巻く不透明性の背景の1つとして「英国のEU離脱問題」を挙げ、「先週、欧州最大の金融センター(英国)が単一市場から離脱することが明らかとなった」「EU27ヵ国として、CMUの形成を急ぐ必要がある」と語った。この認識の下、同副委員長は、強力なCMU確立に向けた中期計画の改定に2017年夏にも着手する方針を示した。

ユーロ建てデリバティブ取引の中央決済機能が課題に

また、基調講演の後半で、同副委員長は「欧州金融に関わる決済(クリアリング)業務の問題」を取り上げた。現在、英国では国内通貨としてユーロを導入していないにもかかわらず、ユーロ建てデリバティブ取引の決済業務など実務の大半がロンドンに集中している。これまで英国は欧州のデリバティブ取引の「中央決済センター」としての役割を担ってきたが、同副委員長は「ブレグジットで、欧州の金融実務の分布図は一変するだろう」と述べた。

そして、この前提で「欧州の金融決済市場の発展(混乱回避)を検討することが肝要」と指摘。a.デリバティブ取引の適正化のための「欧州市場インフラ規制(EMIR)」の順守、b.(英国以外の)EU域内の金融決済業務の活性化、コスト低減や業務効率化などの追求、c.金融決済に関わる欧州と国際市場の有機的連携(国際基準に基づく業務対応)、d.EUとしての金融決済に関する監督・問題解決システムの検討などに適切に取り組むべきだ、との考えを示した。

最後に、同副委員長は「(ユーロ建てデリバティブなど)一部の決済業務の大半が英国に集中している現状の打開を当面の課題と認識し、将来的に(その英国が)EMIRの枠組みの外に置かれることから、早急に解決すべき問題だ」との認識を示した。

(前田篤穂)

(EU、英国、マルタ)

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