タヤーニ欧州議会議長がメイ首相と会談-ブレグジット後の市民の権利保護を最重要視-

(EU、英国)

ブリュッセル発

2017年04月25日

 欧州議会のアントニオ・タヤーニ議長は4月20日、英国のEU離脱以降の将来像について意見交換するため、テレーザ・メイ首相を初めて訪問した。EU・英国相互の市民の権利保護が最優先課題との欧州議会の考えを伝えた。同議長は、6月8日の英国総選挙に伴う新政権と協議することを歓迎したが、「英国による無条件のEU単一市場へのアクセス」「英国政府とEU加盟各国政府との個別交渉」などを一切認めない姿勢も示した。

ブレグジット以降の将来像について意見交換

欧州議会のタヤーニ議長は4月20日、ロンドンを訪れ初めてメイ首相と会談し、英国のEU離脱(ブレグジット)以降の将来像について意見交換を行った。この会談で、タヤーニ議長は、4月5日に欧州議会が採択した「欧州議会として英国のEU離脱を承認する基本条件に関する決議」(2017年4月7日記事参照)を説明したほか、メイ首相を欧州議会での演説に招待した。

タヤーニ議長は、ブレグジットに伴って(相互の)市民の権利が侵害されることのないよう尊重することの重要性をあらためて強調した。同議長は「欧州議会のメッセージは明確で、彼ら(市民)の権利を守ることが最優先事項だ」と語った。会談後の記者会見でも、同議長は英国におけるEU市民、EU域内の英国市民相互の権利についての合意の重要性を強調し、「学生、労働者、その家族といった人々の将来の権利を明確にすべきだ」と述べた。

6月8日の英国総選挙を歓迎

欧州議会はその後の発表で、最優先課題は「相互市民の権利保護」にあるものの、それに続く課題として「英国によるいいとこどり(無条件のEU単一市場へのアクセス)を阻止すること」「(英国政府と)EU加盟各国政府との個別交渉を認めないこと」などをあらためて強調。EU側として、厳しい姿勢で交渉に臨むことを明らかにした。

また、メイ首相が6月8日の総選挙の実施に踏み切ったことについては、「EUとの離脱協議に先駆けて、国内からの強力なマンデート(協議のための権限付託)を狙ったもの」と指摘した。タヤーニ議長は「(英国の動きを)歓迎する」「正式な協議入りの前に、新たな政権を整えることは英国だけでなく、EUにとっても好都合だ」と語っている。

ブレグジットについては一般市民レベルでの不安や懸念も広がっていることから、タヤーニ議長はメイ首相との会談後、ロンドンで幾つかのNGOともブレグジットに伴う諸課題についての意見交換を行った。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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