東部経済回廊地域に重点置いて開発-BOI発表の新投資政策(2)-

(タイ)

バンコク発、アジア大洋州課

2017年03月14日

 タイ政府はチャチュンサオ、チョンブリー、ラヨーンの3県を東部経済回廊(EEC:Eastern Economic Corridor)地域と指定している。これらタイ湾東部地域は約30年前から開発が進み、現在では石油化学産業や自動車産業が集積している。自動車産業が集積した、チョンブリー県のレムチャバン港を中心とした地域は「東洋のデトロイト」と呼ばれる。タイ政府は今後5年間で、同地域に1兆5,000億バーツ(約430億ドル、約4兆8,000億円、1バーツ=約3.2円)の投資を官民で行い、地域のさらなる発展を図る。連載2回目は、EEC地域開発について。

<空港や港湾整備など5プロジェクトを優先>

 ウタマ・サバナヤナ工業相は2月15日開催のセミナー「オポチュニティ・タイランド」で、現在EEC地域で開発が計画されている15プロジェクトのうち、2017年に開始する優先順位の高い、以下の5プロジェクトを発表した。

 

(1)ウタパオ空港:投資額は2,000億バーツ(約57億ドル)。現在の滑走路の東側に新たな滑走路を整備する。さらに、旅客ターミナル、商業施設、自由貿易区域、メンテナンス・修理施設、航空産業向け研修施設を新設する。

 

(2)レムチャバン港開発(第3期):投資額は880億バーツ(約25億ドル)。官民連携(PPP)方式で開発し、世界でトップ10に入る港を目指す。コンテナ取扱量を現在の年間700万TEU(20フィートコンテナ換算)から1,800万TEUに、自動車輸出能力を年間100万台から300万台にそれぞれ増強する。

 

(3)高速鉄道の敷設、既存鉄道の複線化:投資額は1,580億バーツ(約45億ドル)。PPP方式を採用する。ドンムアン空港~スワンナプーム空港~ウタパオ空港間に高速鉄道を敷設する。これにより、ドンムアン空港とウタパオ空港を1時間以内、スワンナプーム空港とウタパオ空港を45分で移動することが可能になる。また、レムチャバン港~マープタプット港間の既存の鉄道を複線化する。レムチャバン港~ラヨーン間、マープタプット港~タラット間までの新線を整備する。

 

(4)EEC内への特定産業の誘致:投資額は5,000億バーツ(約143億ドル)。最先端食料生産・加工技術、自動車・同部品、電子、ロボット、航空機・航空機メンテナンス関連、医療産業(メディカル・ハブ)などをEEC内で発展させる。

 

(5)都市開発:投資額は4,000億バーツ(約114億ドル)。チャチュンサオ、チョンブリーに国際教育機関などの集積を目指す。パタヤ、サタヒップは観光都市として開発する。

 

<EEC地域への投資促進に向け恩典>

 投資委員会(BOI)は、EEC地域をさらに発展させることを目的に、(1)高度技術を使用する特定産業、(2)インフラ整備やロジスティクス整備事業、(3)観光地開発事業、(4)研究開発事業と技術分野をサポートするサービス業、への投資を重点的に誘致する。対象企業に付与される4種類の恩典は以下のとおり。

 

 第1に、既に法人所得税を免除されたグループA(法人税を3~8年間免除)の企業に対する恩典として、EEC地区に立地している場合は、さらに5年間の法人税50%減税の権利が付与される。ただし、2017年中に投資申請書を提出する必要がある。

 

 第2に、EECの特別促進地区で実施する戦略的プロジェクトの場合、特定産業競争力強化法により、最長15年の法人税免除と、補助金を付与する。

 

 第3に、重要性の高い投資プロジェクト実現のため、各組織の支援を統合するとともに、障壁となる規制を緩和する。地域内の利便性向上のためのワンストップサービスも提供する。

 

 第4に、財務省の恩典として、EEC内に本社と施設を有する対象業種の企業の経営者、投資家、専門家に対して、個人所得税を17%に軽減する可能性がある。

 

(長谷場純一郎、真鍋勲生)

(タイ)

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