緊急対応の就労ビザでも取得までに20日程度必要-多種類の入国ビザをめぐる事情(2)-

(インドネシア)

ジャカルタ発

2017年03月27日

 外国人が現地法人への支援などでインドネシアへ出張する場合、会議や打ち合わせであれば、ビザ免除、到着ビザ(VOA)、シングル・ビジネスビザA(B211A)のいずれかで入国できる。しかし、工場での業務指示、技術指導、機械のメンテナンスなど「就労」を伴う短期間の滞在に当たっては、就労ビザ(312)で入国し、さらに労働移住省から就労許可を取得することが必要となる。連載の後編。

<空港到着時に取得できる就労ビザの有効期間は1ヵ月、延長不可>

 就労を伴う出張者向けのビザには、短期の就労ビザと緊急対応の就労ビザがある。前者の短期就労ビザ(312)を取得した場合、滞在期間は1~6ヵ月まで認められる(延長不可)。取得手続きは一般的な外国人駐在員の長期就労ビザと同様で、労働移住省からの許可も比較的取得しやすいようだ。しかし、取得には1ヵ月半ほど要するため、突発的な業務が発生した場合は対応できない。

 

 他方、緊急対応の就労ビザの場合、労働移住省から別途、外国人雇用許可(IMTA)を取得する手続きに5日ほどかかるが、短期就労ビザの半分ほどの期間で終わる。さらに、通常の短期就労ビザの取得では、在日インドネシア大使館での手続きが含まれるのに対し、緊急対応ではインドネシア入管総局からビザ承認テレックス(VTT)が到着予定の空港に発信され、出張者は現地空港でビザと一時滞在許可を一緒に取得できる。通称「空港就労ビザ」とも呼ばれ、最も簡便な就労ビザ手続きだ。ただし、有効期間が1ヵ月と短く、延長できないので留意が必要だ。緊急対応の場合、手続き所要日数は申請から(現地空港で)ビザ・一時滞在許可の取得まで20日程度といわれており、本来の意味での緊急対応には不向きだが、短期就労ビザより取得までの日数が短縮できる。なお、滞在期間中の出入国は複数回可能だ。

 

 シングル・ビジネスビザのうち、就労に近い活動が許されるのが、シングル・ビジネスビザB(B211B)とシングル・ビジネスビザC(B211C)だ。このうちB211Bでは、下記の3つの活動が認められる。

 

(1)工業品の品質・デザイン向上のための産業技術の導入と革新のための育成、指導、訓練の実施および輸出拡大への協力

(2)子会社における監査、品質管理、または検査の実施

(3)外国人労働者候補の勤務能力を判断するためのトライアル

 

 B211Bの取得に当たっては、労働移住省からの推薦状と入管総局からのテレックス承認(VKU-211)が必要となる。推薦状取得に関しては、制度が十分に確立しておらず、現時点では推薦状を取得しないままVKU-211を受けてビザを取得するケースもあるようだ。また、労働移住省からのIMTAを取得すれば、推薦状に代用できる。ただし、認められる活動が限定されていること、IMTAを取得する労力と時間を考えると、ビザ取得の手続きはいずれにしても煩雑となる。

 

 他方、B211Cは管轄機関から許可を得た上での報道活動および商業目的でない映画製作が認められている。

 

 このように、就労を伴う短期出張者のための入国ビザが、出張目的や期間、緊急度に応じて何種類もあるため混乱を来しやすい。ビザの簡素化と規程の明確化が求められる。

 

(鎌田慶昭)

(インドネシア)

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