就業条件の緩和や産休期間の拡大に関心-BSC利用企業向けにセミナー開催-

(インド)

ニューデリー発

2017年03月23日

 ジェトロはインド3ヵ所で展開するビジネス・サポートセンター(BSC)を利用している企業向けに、法務・労務や税務・会計に関するセミナーをニューデリーで開催した。セミナーでは、サービス業における就業条件の緩和や産休保障期間の拡大、物品・サービス税(GST)導入に向けた対応などに関心が集まった。

<有望な新興国にBSCを設置、インドは3ヵ所>

 ジェトロは、日系企業の投資先として有望視される新興国(タイ、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、インド)にBSCを設け、進出準備期間のレンタルオフィスの提供、常駐アドバイザーによる経営や生活における相談対応、サービスプロバイダーの紹介などに当たっている。インドではニューデリー、ムンバイ、チェンナイの3ヵ所にBSCを設置しており、これまでに167社が利用し、このうち拠点設立まで至った企業は85社に達する。さらにジェトロは、BSC利用企業を対象にしたセミナーを定期的に開催し、日々の事業運営に対する課題や投資環境などに関する情報交換の機会を設けている。217日にニューデリーで開催されたセミナーでは、進出企業の関心が高い法務・労務や税務・会計に関する最新情報などが共有された。

 

<カースト起因の分業意識理解の難しさも共有>

 本セミナーでは法務・労務関連のトピックとして、「2016年モデル店舗商業施設法」が施行されたことによるサービス業の就業条件の緩和が取り上げられた。具体的には、従業員に週休1日を与えることを前提とした365日営業の承認、フレックスタイムの導入や女性の夜間勤務条件の緩和などが盛り込まれている。同法は中央政府が各州の規範となるモデルを定めた法律であり、各州政府はこれをベースに、各州それぞれの事情に応じて詳細なルールを決定できる。

 

 また、工場などに適用される「1950年従業員保険法」の改正による産休保障期間の拡大も話題となった。産休期間および保障期間が12週間から26週間に拡大することを受け、給与支給対象期間も同様に拡大することになった。これにより企業が負担する費用の増加も想定されるため、特に女性労働者を多く抱える工場などでは注意が必要だ。

 

 このほか、カースト制度に起因する分業意識など、インド特有の職業観念に対する理解の難しさも事業運営上の課題として共有された。

 

GST導入後の納税方法も話題に>

 税務・会計関連では参加企業から、サービス税の課税動向、恒久的施設(PE)課税の対象範囲、税源浸食と利益移転(BEPS)導入に伴う移転価格への影響などへの質問が出された。7月に導入が予定されているGSTについては、現段階で制度設計の最終形は明らかになっていないものの、スキームの大枠は決定していることから、現時点で準備すべきこと、導入後の具体的な納税方法などに関心が集まった。

 

 セミナーでは、インドで頻繁に改正される労働法や税制などに対する本社の理解の遅れも指摘された。その対策として、法務や税務の課題も含め、インド事業運営の実態を本社側に適切に理解してもらうため、本社の経営陣や担当者が現地へ出張する機会をつくり、あらゆる局面においてスムーズな意思疎通を図る仕組みづくりが必要だとする意見が参加企業から出された。

 

(古口裕理、柳沢佳澄、大穀宏)

(インド)

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