法人所得への課税方法が変更、租税条約の発効相次ぐ-中南米の制度改定動向-

(チリ)

サンティアゴ発

2017年03月03日

 2017年から、法人所得への課税方法が変更された。会社の形態などによってインテグラド方式かセミ・インテグラド方式のいずれかになった。両方式では法人税率や追加税の課税対象所得が異なり、法人税の税額控除率は、送金先国と租税条約を締結しているか否かによっても異なる。日本とは1月1日に租税条約の適用が始まり、利子と使用料の送金に対する課税率が引き下げられた。

<2つの方式で異なる法人税率>

 2014年の税制改革(法20780号、2014年9月29日官報掲載)により、2017年から法人所得への課税方法が、インテグラド方式(所得税法14条A)かセミ・インテグラド方式(14条B)かになった。

 

 税制改革簡素化法(法20899号、2016年2月8日官報掲載)により、インテグラド方式を選択できるのは、自然人のみで構成される個人起業家、個人有限責任会社(E.I.R.L.)、一部の簡易株式会社(SpA)などとされ、株式会社(S.A.)および出資者に法人が含まれる企業はセミ・インテグラド方式となった。法人税率は、インテグラド方式では25%、セミ・インテグラド方式では25.5%で、2018年以降は27%となる。

 

 なお、中小企業の場合はインテグラド方式のほかに、会計処理などが簡略化される方式(所得税法14条Ter-A)や、農業、運輸、鉱業の中小企業に対する推定所得に基づく課税方式(34条)を選択することもできる。

 

<追加税の課税対象や税額控除にも違い>

 配当の海外送金については、チリ非居住者を対象に追加税(源泉税)35%が賦課され、そこから法人税が税額控除されるが、2017年からは選択した課税方式により、追加税の課税対象と法人税の税額控除率が異なる(表1参照)。

表1 法人所得への課税率(2017年)

 インテグラド方式を選択した場合は、全所得に対し35%の追加税が賦課され、法人税の100%が税額控除される。これに対しセミ・インテグラド方式では、配当・送金額に対してのみ35%の追加税が賦課され、法人税の税額控除率は65%となる。そのため最終的な課税率は、インテグラド方式では全所得に対し35%となり、セミ・インテグラド方式の場合には、2017年は配当・送金額に対しては43.925%、それ以外の所得に対しては法人税のみが賦課されるため25.5%となる。

 

 ただし、チリとの租税条約が発効している国へ配当・送金する場合は、両方式ともに法人税の100%が税額控除される。また、201711日までにチリと租税条約を締結している国へ配当・送金する場合も、暫定措置として、20191231日までは法人税の100%が税額控除される。

 

 2014年の税制改革発表後、日本、中国、アルゼンチンなど計7ヵ国との租税条約が発効し、201711日時点で32ヵ国と発効、2ヵ国と締結状態になっているため、これら34ヵ国には租税条約発効・締結による法人税100%の税額控除が適用される。

 

<日本は租税条約で利子などの送金税率が軽減>

 日本とチリの間では201711日に日智租税条約の適用が開始され、利子と使用料の送金に対する課税率も大幅に引き下げられた(表2参照)。

表2 利子と使用料の送金にかかる課税率

 ただし、チリ国外の関連会社(10%以上の資本・利益を所有など)への利子送金に関しては別途、過少資本税制(所得税法41F)により、年度末の負債総額が純資産の3倍を超過した場合、その超過分が資産全体に占める割合に応じた債務者負担となり、35%が賦課されるので注意が必要だ。

 

 また、使用料に関しては、日本など所得税が30%未満の国に所在する関連会社へ送金する場合に限り、全所得の4%まで使用料が経費として税額控除される。

 

(小竹めぐみ)

(チリ)

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