食肉不正が発覚、21加工施設が捜査対象に

(ブラジル)

サンパウロ発

2017年03月24日

 ブラジル農牧食料供給省の職員が食肉メーカーから賄賂を受け取り、期限切れの食肉製品に品質認証を発行するなどの不正行為を行っていたことが明らかになり、ブラジル産食肉の輸入を停止する国・地域が出るなど、国内外に波紋を広げている。連邦政府は火消しに躍起となっているが、この問題は交渉中の南米南部共同市場(メルコスール)・EUの自由貿易協定(FTA)や、ブラジルが求めている中国と米国の食肉市場開放にも影響が出る恐れがありそうだ。

<政府は沈静化に懸命>

 「カルネ・フラカ(Carne Fraca、不衛生な肉)作戦」と呼ばれる食肉不正の捜査は、連邦農畜産検査監査官の告発がきっかけで2年前に開始されていたという。3月17日に連邦警察が、農牧食料供給省や関与していた企業の家宅捜索、職員や従業員らの一時拘束などを行ったことで、同作戦が明るみに出た。同日、同省は捜査対象の21の食肉加工施設のうち3施設の操業を停止させ、省内に特別タスクフォースを設置し、上記21施設を特別検査体制下に置いた(3月19日付プレスリリース)。

 

 この問題についてテーメル大統領は3月19日、ブラジルに駐在する各国大使を集めた会合で、「捜査の目的は、厳格さが認知されているブラジルの農畜産検疫システムではなく、わずかな企業の、わずかな職員による、わずかな数の歪曲(わいきょく)だ」と述べた。

 

 また、同席したブライロ・マギー農牧食料供給相も「連邦警察は捜査を継続する。当省は良いものと悪いものを判別するためにあらゆる支援を行う。農畜というブラジルの一大産業を構成する大半の企業および社員が、わずかな人のせいで窮地に追い込まれることは容認しかねる」と述べるなど、政府は事態の沈静化に努めている。

 

<EUとメルコスールのFTA交渉にも影響か>

 「エスタード」紙(3月18日)は、メルコスールとEUとのFTA交渉の中で、ブラジルはEUへの食肉輸出拡大に力を入れてきたが、EUの生産者がこの問題を盾に交渉に抵抗するのは必至、と報じている。ブラジルは食肉市場の開放を求め、中国や米国などとの2国間交渉を予定しているが、これについてもこの問題が影を落とすことになりそうだ。

 

 また、「バロール」紙(3月20日)が、EUは「カルネ・フラカ作戦」の対象となっている食肉業者からの輸入の中止を決定し、これに追随して韓国と中国も一時的な輸入の中断を発表した、と報じており、ブラジル農畜産品の主要輸出相手国は厳しい対応を取っている。

 

 日本の厚生労働省は、前述の21施設のうち1施設が日本向けに鶏肉を輸出していることを受け、3月21日付で日本国内の各検疫所に対して、当該施設からの鶏肉の輸入手続きを保留し、また、当該施設以外からの輸入畜産品についても検査を強化するとともに、サルモネラ菌などの検査を実施する通知文書を発出した。

 

(山本祐也)

(ブラジル)

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