自動車の生産拡大で注目される南東部－アラバマ州で自動車部品商談会（1）－

＜生産の急拡大で新規調達先求める動き活発＞

　ジェトロは3月9日、アラバマ州ハンツビルで日系自動車部品・素材メーカーの販路開拓支援を目的に、アラバマ自動車製造業協会（AAMA）と協力し、同州に拠点を置く自動車・同部品メーカーなどとの商談会を開催した（注1）。商談会には、日系自動車部品メーカーなど14社（うち2社は日本から参加）が出展した。

　南東部（注2）では近年、自動車生産が大きく拡大している。2016年の南東部における自動車の生産台数は539万台で、過去5年間で63.0％増加した。米国全体の生産台数自体が37.3％増だったのに比べ、南東部の生産はそれを上回るペースで伸びている。このうち、アラバマ州にはダイムラー（メルセデス・ベンツ）、ホンダ、現代の3社が組立工場を持ち、州内の2015年の生産台数は100万台を超える。ほかにも、トヨタがハンツビル近郊でエンジンを製造しており、主に米国内で生産される乗用車「カムリ」、スポーツ用多目的車（SUV）、ピックアップトラック向けに、2016年は約70万個（前年比11％増）のエンジンを製造した。

　自動車生産が拡大するアラバマ州の投資環境上の魅力について、同州政府で経済振興を担当するアラバマ経済開発パートナーシップ（EDPA）のスティーブ・スウェル副社長は「まず挙げられるのが賃金や土地代などのコストの安さだ。化学産業が発展しており、素材を安く調達できる。また、労働組合の組織率が低いのも魅力」と指摘する。ハンツビル商工会議所プロジェクトマネジャーのウィル・ウェスト氏も「ハンツビル周辺地域の生活コストは全米平均より10％ほど割安だ。賃貸料については25％ほど安い」とメリットを強調する。AAMAのロン・デイビス会長は「賃金、土地代、税制インセンティブなど総合的にみて、アラバマ州での生産にはメリットがあり、今後も生産拡大の傾向は続く」との明るい見通しを示した。

　スウェルEDPA副社長は州内の自動車産業の状況について、「自動車メーカー、部品メーカーはここ数年の間で、生産のボリュームが急増したため、サプライヤーの生産能力が限界に近づいている。サプライチェーンに穴が開く可能性があり、新規の調達先、特に高い技術を持った調達先、提携先を探す動きが出ている」として、今回の商談会が時機にかなったものだと評価した。

＜2017年秋にサウスカロライナ州でも商談会の開催検討＞

　出展企業へのアンケート調査によると、出展企業は合計で78件の商談を行った。このうち、成約見込みは5件で、成約見込み額は1億5,300万円に上る。日本から参加したA社（自動車用鋼管製造）は「今回、米国での拠点設置に向けた現地視察を兼ねて参加した。個別商談会で面談した企業とは早速ビジネスができそうで、米国での新規ビジネスの展開について社内でも前向きに検討していきたい」と手応えを感じている。カリフォルニア州から参加したB社は「自動車用金属部品を輸入して、取引先に配送している。カリフォルニアに立地しているものの、生産が活発な南東部に営業に来ることが多い。日系自動車メーカーをはじめ、複数の企業と商談ができた」と語った。

　イリノイ州から参加したC社（工場用浄水フィルター販売）も「展示会などにも出展しているが、コネクションがないため、なかなか第一歩が踏み出せない。今回、潜在的な顧客ともコンタクトでき、有意義だった」と評価した。ミシガン州から参加した試作品メーカーのD社は「2016年に現地法人を設立した。新規顧客の獲得のため参加した。すぐに商談に結び付かなくとも、何かのかたちでつながっていくことを期待する」と述べた。

　なお、ジェトロでは2017年秋に、サウスカロライナ州で同様の商談会の開催を検討している。

（注1）同商談会はAAMAが開催する、自動車分野の基準・規格などをテーマとしたシンポジウム「品質サミット（Quality Summit）」の会場に隣接するかたちで開催した。

（注2）南東部とは、アラバマ、アリゾナ、ウェストバージニア、オクラホマ、ケンタッキー、サウスカロライナ、ジョージア、テキサス、テネシー、デラウェア、ノースカロライナ、バージニア、フロリダ、ミシシッピ、ルイジアナの15州を指す。

（若松勇、河内章、堀田基）