「進出拡大を図る」が4年ぶりに6割超す-2016年度日本企業の海外事業展開アンケート調査-

(日本、世界)

国際経済課

2017年03月09日

 ジェトロは2016年11月~2017年1月、日本企業9,897社を対象に、2016年度の海外事業展開に関するアンケート調査(有効回答数2,995社、うち中小企業2,355社、有効回答率30.3%)を実施した。それによると、今後(3年程度)に海外進出の拡大を図るとの回答が4年ぶりに6割を超えた。国・地域としては、ベトナムでの事業拡大に意欲的な企業が2年連続で増加した一方、メキシコでは製造業を中心に拡大意欲に陰りがみられた。

<輸出拡大意欲は引き続き高水準>

 「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(注)によると、今後(3年程度)の輸出方針については、「輸出の拡大をさらに図る」企業が70.1%と前年(74.2%)からやや減少したものの高水準を継続、「新たに取り組みたい」企業(11.8%)と合わせると81.9%の企業が輸出拡大に意欲を示した。最も重視する輸出先としては、過去の調査(2012年度)と比べて米国、ベトナム、西欧を挙げる企業の割合が高かった。

 

<「国内事業拡大を図る」が2011年度以降最大の54.7%>

 今後(3年程度)の海外進出方針では、「拡大を図る」企業の割合が60.2%と、前年(53.3%)から増加し、4年ぶりに6割を超えた。企業規模別では、大企業で66.3%が「拡大を図る」と回答し、2012年度以降続いた減少傾向から増加に転じた。中小企業は、「拡大を図る」が前年の50.5%から58.5%へと大きく増加した。

 

 一方、今後(3年程度)の国内事業展開方針では、「拡大を図る」企業が54.7%と、前年(52.0%)から増加し、比較可能な2011年度以降で最大となった。国内事業を拡大する理由としては、前年に続き、「国内での需要の増加」(54.6%)と回答する企業が半数を超えた。

 

<ベトナム事業拡大意欲が2年連続増加、メキシコは製造業を中心に陰り>

 「現在、海外に拠点があり、今後さらに海外進出の拡大を図る」と回答した企業のうち、拡大を図る主要国・地域としては、ASEAN6ヵ国(70.5%)が中国(52.3%)を5年連続で上回った。ASEAN6ヵ国の中では、タイ(前年41.7%→38.6%)とともにインドネシア(31.8%→26.8%)が減少する一方、ベトナム(32.4%→34.1%)とフィリピン(11.3%→13.4%)は増加した。また米国については、製造業で事業拡大意欲の上昇が続いている。その他の新興国では、メキシコ(10.9%→8.5%)、ブラジル(5.1%→3.4%)、トルコ(3.4%→1.7%)で事業拡大意欲に陰りがみられ、特にメキシコでは製造業でその傾向が顕著だった。

 

 国内外拠点・機能の再編について、移管元では中国が移管件数全体(458件)の36.0%を占め、日本(30.8%)を上回った。一方、拠点・機能の移管先では、ASEANが36.9%を占め、2014年度調査に引き続き最大となったものの、その割合は低下した。また、日本への移管が14.6%となり、初めて中国(13.8%)を上回った。

 

<外国人を雇用する企業は約半数>

 海外ビジネス拡大に向けた人材戦略については、「現在の日本人社員のグローバル人材育成」が48.1%と最も多く、次いで「外国人社員の採用、登用」(23.1%)が多かった。

 

 「外国人を雇用している」企業は46.0%と、2年連続で緩やかな増加基調にある。「外国人を雇用している」割合は、大企業で73.1%だった一方、中小企業は38.6%にとどまる。ただ、「今後採用を検討したい」と回答した中小企業は24.7%あり、外国人材への関心は高いようだ。

 

<電子商取引の利用率は24.4%、海外販売では47.2%>

 国内外での販売において、「電子商取引を利用したことがある」企業は24.4%あり、「利用を検討している」(22.5%)と合わせると46.9%に上った。

 

 電子商取引を利用したことのある企業(731社)のうち、海外への販売で利用したことのある企業は47.2%だった。大企業(49.1%)、中小企業(46.6%)とも半数近い企業が海外販売で電子商取引を利用している。海外販売先(日本からの輸出、海外拠点での販売)については、中国(電子商取引を利用し、海外へ販売を行っている企業の49.6%)、米国(36.2%)、台湾(26.4%)、香港(22.6%)、韓国(19.4%)が上位を占めている。

 

<45.1%の企業がFTAを利用>

 日本の自由貿易協定(FTA)締結国へ輸出を行う企業のうち、当該FTAを利用している割合(FTA利用率)は45.1%(557社)だった。FTA利用率を計算する際の母数には、関税がゼロであること、または他の関税減免制度の使用によりFTAを使う必要のない企業もあるが、これら企業を母数から除いた場合のFTA利用率は49.9%となった。

 

(注)本調査は、ジェトロ・メンバーズ企業(ジェトロの会員制度に加入している企業)を対象に2002年度から開始し、今回で15回目。2011年度からは、ジェトロのサービスを利用した企業へも対象を拡大。2016年度は、ジェトロ・メンバーズ企業3,546社、ジェトロのサービス利用企業6,351社の計9,897社を対象に実施した。

 

(長崎勇太)

(日本、世界)

ビジネス短信 30a6cdf164d511ce