2017年商標規則を施行、料金引き上げや手続きを簡素化

(インド)

ニューデリー発

2017年03月29日

 2017年商標規則が3月6日付で施行された。手続き料金の引き上げの一方で、商標登録出願を迅速に処理する早期審査の運用改善や、74種類に上った書類様式の集約、音商標の導入など、インドの商標権制度が国際標準に近づいたといえる。

<商標保護の重要性認識し国際標準に近づく内容に>

 インドにおける商標登録出願は過去10年以上、増加の一途をたどってきた。2014年度は21万501件に上り、同じ知的財産である特許出願数の5倍、意匠登録出願数の20倍超となっている。インドで商標保護の重要性への認識が高まる中、商工省産業政策振興局(DIPP)は3月6日、商標登録に係る手続きなどを規定する2017年商標規則(Trade Marks Rules, 2017)を公表し、即日施行した。これにより、旧来の2002年商標規則は新規則に置き換えられた。なお今回の改正は、2015年11月に公表されたドラフト版へのパブリックコメントを経た内容になっている。

 

<周知商標の認定や音商標の保護制度を導入>

 今回の商標規則では、出願する企業にとって好ましい改正が複数盛り込まれた。第1に、早期審査の運用改善だ。従来、商標登録出願を迅速に処理するための早期審査の対象期間は、出願から審査報告書(FER:First Examination Report、注1)が送付されるまでに限定されていたが、今回の改正によりFERが送付された後も、出願が最終的に処理されるまでの期間が認められることになった(規則34)。ただし、FERが送付された後の手続きがどの程度の期限で処理されるかは、追って定められるガイドラインによるとされている。

 

 次に、74種類に上った書類様式が8種類に集約された。異なる手続きでも同一の様式で処理できるケースが増え、申請書類の準備に要する時間と手間が大幅に省かれることになる。さらに、インドで広く知られた商標を「周知商標(Well Known Trademark)」として認定することを請求できる制度が導入された(規則124)。自社の商標が周知商標と認定され、インド商標局から「お墨付き」が与えられれば、模倣行為の抑止や係争時の訴訟期間の短縮が期待できる。また、音商標の保護制度も導入された〔規則26(5)〕。例えば、CMなどに使われるサウンドロゴやパソコンの起動音などを商標として登録する同制度は、日本では2015年から導入されており、日本企業は今後、インドでも同様に音商標の権利化を目指すことが可能となる。

 

<出願や更新登録申請料金は引き上げ>

 一方で、出願料金が大幅に引き上げられた。例えば、大企業が電子手続きするケースではこれまでの出願料金が1区分(注2)4,000ルピー(約6,800円、1ルピー=1.7円)だったのが9,000ルピーに、更新登録申請ではこれまでの1区分5,000ルピーから1万ルピーに引き上げられた。

 

 また「電子手続き(E-filing)」と「書面手続き(Physical filing)」で異なる料金体系が設けられ、電子手続き料金を書面手続き料金より10%安く設定した。電子化を奨励し、手続きの迅速化を目指す政府の狙いがある。ただし、前述の早期審査請求(規則34)や周知商標の認定請求(規則124)など、一部の手続きは書面手続きが認められていない。

 

 なお、個人やスタートアップ企業、小規模事業者による商標登録出願や更新登録申請を奨励する狙いから、こうした出願人に対する料金体系を新たに設定し、上記の手続きを含む一部手続きについては、通常料金の半額とした。ただし、それでも従来の料金に比べると高くなるケースが多くなっているので、注意が必要だ。

 

 2017年商標規則は、DIPPのウェブサイトで公開されている。

 

(注1)出願人に対し、商標登録出願を拒絶する理由があるか否かの審査結果を最初に通知するもの。

(注2)商標の使用を予定する商品などの区分け。

 

(大谷仁郎)

(インド)

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