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自動車業界、離脱交渉に慎重さを求める-投資約束額が先行きの不確実性で大幅減-

(英国)

ロンドン発

2017年02月06日

 英国の自動車製造販売者協会(SMMT)のマイク・ホーズ会長は、2016年の同国自動車産業への投資約束額が、将来に対する「不確実性」から大幅に前年より減少したと発表した。また、自動車業界には「無関税で非関税障壁のない貿易が不可欠」とし、今後のEU離脱交渉について「失敗すれば英国自動車産業が修復不可能な打撃を受ける可能性がある」と懸念を表明、政府に慎重な取り組みを求めた。

<「失敗すれば修復不可能な打撃」と懸念>

 SMMTは1月26日、2016年の英国自動車産業への投資約束額は16億6,000万ポンド(約2,340億6,000万円、1ポンド=約141円)で、前年の25億ポンドから大幅に縮小したと発表した。前日の記者会見で、ホーズ会長は「EU離脱や米国のトランプ政権発足などに伴う不確実性により企業が様子見しているからだと思う」と説明し、投資縮小に懸念の色を隠さなかった。

 

 テレーザ・メイ首相が1月17日に明らかにした英国のEU離脱方針案(2017年1月18日記事1月20日記事参照)では、英国がEU単一市場と関税同盟から離脱することが示された。それにより、離脱後の英国とEUとの通商関係がWTOルールに頼らざるを得ない事態に陥る可能性も出ている。ホーズ会長は今後の英国の交渉について、「拙速であってはならず、適切なものでなければならない。失敗すれば英国自動車産業が修復不可能な打撃を受ける可能性がある」と述べ、政府に対し慎重な取り組みを求める姿勢を強調した。

 

<関税を課されるのは「レッドライン」>

 ホーズ会長は、英国自動車業界にとってWTO協定税率(10%)はもちろんのこと、より低い税率であっても、EUに関税を課されることは「越えてはならない一線(red line)だ」と位置付ける。メーカー各社が2~4%の利益率で操業する現状で、「関税賦課によるコストを吸収することはかなり難しく、短期間に生産性を上げることはできないだろう」と考えているからだ。

 

 またホーズ会長は、英国で生産されている自動車の約8割が輸出されているが、その一方で、英国製自動車の部品のうち65%を欧州諸国から輸入している現状も指摘した。英国だけでなく、EU企業にとっても「無関税で非関税障壁のない貿易は重要だ」とし、それが交渉の際に説得力を持つとみている。しかしその一方で、EU以外の国とのグローバルな2国間自由貿易協定(FTA)を利用した輸出を想定する場合、「英国内での現地調達率の引き上げを考える必要が出てくるだろう」と語った。

 

<日産社長が投資見直しの可能性も示唆>

 英国では大小約15のメーカーが自動車を生産しているが、主要6社(注)による生産台数が全体の98.4%(2016年)を占め、この6社はいずれも外資傘下にある。自動車産業への投資手控えは、英国のEU離脱を選択した国民投票(2016年6月)の前から始まった。2016年10月27日に日産が、サンダーランド工場で生産中の小型スポーツ用多目的車(SUV)「キャシュカイ(日本名:デュアリス)」の次期型に加え、「エクストレイル」次期型の生産を決定し、それに伴う投資と7,000人の雇用確保を発表したのが、国民投票後では自動車産業への最初の大型投資約束となった。

 

 この発表に先立って、同社のカルロス・ゴーン社長とメイ首相の面談(内容は非公表)が10月14日に行われた。同社は「今回の決定はサンダーランド工場の競争力維持を公約する英国政府の表明を受けてなされたもの」と説明している。

 

 なお報道によると、ゴーン社長は2017年1月20日、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム後の記者会見で、「英国のEU離脱条件が出そろった時点で、状況を精査したい」と述べ、今後の交渉進捗状況次第では投資見直しの可能性を示唆している。

 

(注)ジャガー・ランドローバー、日産、ミニ、トヨタ、ホンダ、ボクスホール。

 

(岩井晴美)

(英国)

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