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単一市場参加国の地位を放棄、関税設定の自由を志向-メイ首相がEU離脱交渉の基本方針を発表-

(英国)

ロンドン発

2017年01月18日

 テレーザ・メイ首相は1月17日、EU離脱交渉における政府の基本的な考え方を明らかにした。EU単一市場へのアクセスについては、単一市場参加国としてでなく自由貿易協定(FTA)を通じた最大限のアクセスを追求するほか、EUとは関税同盟ではなく新たな関税協定の構築などを模索する考えを示した。



<包括的FTAにより最大限のアクセスを追求>

 メイ首相はロンドン市内のランカスター・ハウスで、政府高官や各国大使らを前にEU離脱交渉における英国政府の12の追求事項を説明した(表参照)。


表 EU離脱交渉における政府の追求事項



 産業界にとって関心が高いのが、人・モノ・資本・サービスの4つの移動の自由を認めるEU単一市場にEU離脱後も参加できるか否かだが、これについてメイ首相は「単一市場への参加は4つの自由を受け入れることを意味し、EU離脱後も単一市場に参加するにはEUのルール作りに関与せず、そのルールに従う必要があるとEU側は繰り返し主張している。しかし、これはすなわちEU司法裁判所(CJEU)の機能を英国で受け入れることであり、英国がEUを離脱することとは到底見なせない」とし、「英国は単一市場参加国としての地位ではなく、大胆かつ野心的な包括的FTAにより単一市場への最大限のアクセスを獲得することを追求する」と説明、EU単一市場参加国としての地位を放棄する考えを示した。新たなFTAの具体的内容について詳細は明言しなかったが、自動車輸出や国境を超えた金融サービスなど他のEU加盟国と同一のルールが長年適用されている分野では、一から関係を構築することの意味は乏しいため、既存の単一市場に関する取り扱いがそのまま適用されることも想定される、としている。

 

<関税同盟参加は包括的貿易交渉の妨げ>

 政府はEU離脱に伴いEU域外諸国との経済関係拡大を志向しているが、その際に課題となるのがEUとの関税同盟の取り扱いだ。関税同盟は同盟国間に適用される関税を原則として撤廃しつつ、共通の通商政策の下、同盟国以外の国との間の関税率は協調を図るものだが、メイ首相は「関税同盟への完全な参加は各国との包括的な貿易交渉を進める妨げとなる」として、関税同盟はEU域外諸国との貿易関係構築にとって障害になるとの認識を示した。その一方で、EUとの無関税貿易の維持には期待を示し、「新たな関税協定の締結や関税同盟の準加盟国としての地位獲得、関税同盟の一部条項の署名などの選択肢について予断なく検討したい」と語った。

 

 メイ首相はまた、「2年間の交渉期間にEUとの新たな関係性についての合意を目指す」と早期合意に意欲を示しつつ、ビジネス環境や規制環境などの安定性維持のため、EU離脱に伴う移行措置の設定も訴えた。EU離脱の影響は多岐の分野にわたるため、移行措置の適用期間は個々の案件によるとしながら、中途半端な状態の固定化を避けるためにも移行措置はあくまで暫定的なものだと強調した。

 

<戦略的パートナーシップの合意を確信>

 国民のEU離脱の選択を後押ししたのが移民の増加への懸念だが、これについては従来の主張と同様に「EU離脱は、EUからの移民数の管理を意味するものでなければならない」と、移民管理の強化を強調した。また、「既に英国内に居住しているEU市民や、他のEU加盟国に居住している英国民の地位については、その保証を早急に与える必要性をEU加盟国首脳の多くと共有しているが、そのうち12人が認識を異にしている」と指摘するなど、EU側との交渉の難しさをうかがわせた。

 

 その一方でメイ首相は、英国とEUの双方が閣僚レベルで広く議論を重ねる中で、英国のEU離脱後も良好な関係を維持することが相互の利益になることが明らかになるとした。その上で、英国の交渉方針が双方のニーズにかなっている、英国が提案する新たな関係はゼロサムゲームに陥らない経済的合理性が伴う、経済だけでなく安全保障面なども見据えた協力関係が必要だとして、「英国とEUとの新たな戦略的なパートナーシップに合意することを確信している」と、交渉の妥結に自信を示した。

 

(佐藤央樹)


(英国)

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