TN州首相が就任2ヵ月で辞任、後任に前高速道路相

(インド)

チェンナイ発

2017年02月22日

 タミル・ナドゥ(TN)州のパニールセルバン州首相が就任2ヵ月後の2月5日に辞意を表明し、2月18日、前高速道路・港湾担当相のK・パラニスワミ氏(62歳)が後任の首相に就任した。閣僚は1人を除き留任した。現地の報道などによると、首相交代の背景には、2016年12月に死去したジャヤラリータ元州首相の側近だったサシカラ氏を中心とする州議会与党内での対立があったとされる。

<元首相の死去後、与党内で2派が対立>

 TN州議会与党の全インド・アンナ・ドラビダ進歩連盟(AIADMK)の絶対的リーダーだったジャヤラリータ州首相が2016年12月に死去、後継者として指名されたのはパニールセルバン氏だった。ジャヤラリータ氏が有罪判決を受けて服役していた時期を含め、2回州首相を務めた実績があった。

 

 一方、党内ではジャヤラリータ氏の長年の側近だったサシカラ氏が台頭し、12月29日に党総裁に就任した。サシカラ氏は議員ではないものの、ジャヤラリータ氏の信頼が厚かったことから、自らを正当な後継者だと主張し、これが党内での支持拡大につながったとみられる。現地紙などは、党内にパニールセルバン氏派とサシカラ氏派の対立があったと指摘していた。

 

 2017年2月5日に開催されたAIADMK所属州議会議員の会合で、パニールセルバン州首相が辞意を表明し、サシカラ氏が代表に満場一致で選出され、次期州首相の最有力候補と目されていた(「ザ・ヒンドゥー」紙2月6日)。

 

<サシカラ氏は有罪判決受け議員になれず>

 しかし、インド最高裁が2月14日、係争中だった不正蓄財案件についてサシカラ氏の汚職防止法違反を認め、懲役4年、罰金1億ルピー(約1億7,000万円、1ルピー=約1.7円)の有罪判決を言い渡した。同氏は翌日、カルナタカ州内の刑務所に収監された。

 

 1951年人民代表法(Representation of the People Act,1951)は、「汚職防止法違反で有罪判決を受け収監された者は、服役終了後6年間は議員となることができない」と定めている。今回の判決により、サシカラ氏は刑期の4年を含め、向こう10年間は議員になれないこととなった。

 

 サシカラ氏は判決後、AIADMK所属州議会議員の代表の座を、前高速道路・港湾担当相で同氏への忠誠心が強いとされるパラニスワミ氏に譲ると発表、これにより同氏が州首相に就任することとなった。同氏は2月16日、TN州知事の前で宣誓式を行った。

 

<閣僚は1人を除き留任>

 2月16日に発表された新政権の閣僚は、K・パンディアラジャン前学校教育・スポーツ・青少年福祉担当相を除き留任となった。各大臣の所管業務の変更もない。パニールセルバン氏が所管していた業務はそのままパラニスワミ新州首相が引き継ぎ、パンディアラジャン氏の所管は新入閣のK・A・センゴッタイヤン氏が担う(表参照)。

表 主要閣僚

 パラニスワミ氏はパニールセルバン政権やその前のジャヤラリータ政権でも主要閣僚に名を連ねていた。州議会議員には4度当選しているが、州首相就任は初めて。

 

 一方、ビッディヤサガル・ラオTN州知事は「与党内に競合勢力が存在するとの報告を受けている」とした上で、パラニスワミ氏に対し、同氏が州議会の過半から支持を受けていることを証明するため、州議会議員による信任投票を行うよう要請した。投票は2月18日に行われ、議席数234の半数を超える122票を獲得、正式に州首相に就任した。

 

(前田雄太)

(インド)

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