トランプ大統領、TPP離脱とNAFTA再交渉を表明-就任演説では米国第一主義を強く打ち出す-

(米国)

ニューヨーク発

2017年01月23日

 大統領に就任したドナルド・トランプ氏は1月20日の就任演説で、「全ての政策は米国人の労働者、家族の利益のために実施される」「米国製品を買い、米国人を雇用する」など、米国第一主義を強く打ち出した。同日には、事前の公約どおり、ホワイトハウスのウェブサイトで環太平洋パートナーシップ(TPP)協定からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明した。このほか、法人税の引き下げなどの税制改革、米国のエネルギー資源(シェール、天然ガスなど)を最大限活用することなどを表明した。

<「全ては米国人の利益のために」>

 120日、首都ワシントンで大統領就任式が行われ、201611月の大統領選挙で勝利したトランプ氏が第45代大統領に就任した。トランプ大統領は就任演説で、「今日からこの国は新しいビジョンによって統治される。米国第一主義だ。貿易、税制、移民、外交に関する全ての政策は米国人の労働者、米国人の家族の利益のために実施される」「われわれは米国製品を買い(バイ・アメリカ)、米国人を雇用する(ハイヤー・アメリカ)という2つの単純なルールに従っていく」として、選挙戦を通じて訴えていた「米国第一主義」をあらためて推進していくことを明言した。

 

 また、トランプ大統領は「われわれは自分の気持ちを自由に話すべきだが、常に連帯することが必要だ。米国が団結するとき、誰も米国を止めることはできない」と語り、国民の結束を呼び掛けた。最後は、選挙戦のキャッチフレーズでもあった「われわれは米国を再び偉大にする(We will make America great again)」で演説を締めくくった。

 

<成長率4%、雇用2,500万人創出を表明>

 大統領府のウェブサイトで同日、通商、外交、エネルギーなどの政策が6テーマに分かれて発表された(表参照)。内容的には、選挙前の公約で表明していたものとほぼ同じといえる。

表 トランプ大統領が1月20日に発表した政策

 まず、「米国人のための貿易交渉」とのテーマの中で、TPPからの離脱を表明した。NAFTAについては再交渉し、相手国が米国人労働者に公正な交渉を拒んだ場合は脱退を通知する、とした。また、全ての不正な貿易行為を特定し、あらゆる手段で止めさせるように商務長官に指示するという。ただし、選挙公約で為替操作国に指定するとしていた中国について、具体的な言及はなかった。

 

 「雇用の回復と成長」では、今後10年間に2,500万人の雇用を創出し、成長率4%を実現すると表明した。税制改革を通じ、税制の簡素化、全ての税区分での税引き下げ、法人税の引き下げを実施するとしている。税制改革については、ポール・ライアン下院議長(ウィスコンシン州)、ケビン・ブレイディ下院歳入委員長(テキサス州)を中心とした議会共和党指導部が、トランプ大統領の政権移行チームとの間で具体的な中身について、協議を進めているもようだ。改革案の中には、輸入品に一定の税率が課税される「国境税調整」が含まれており、進出日系企業の間でも懸念が持たれている。

 

 また、「米国第一エネルギー計画」では、エネルギーコストの引き下げ、米国のエネルギー資源(シェール、天然ガスなど)の最大限の活用、外国資源への依存からの脱却が盛り込まれた。さらに、前政権の包括的な気候変動対策である気候行動計画などの政策、規制の撤廃により7年間で300億ドル以上の賃金を増やすという。エネルギー生産による収入を道路、学校、橋などの公共インフラの建設資金に充てる方針も示された。また、クリーン石炭技術の推進、石炭産業の復活も表明された。

 

 トランプ大統領は20日夜、医療保険制度改革法(オバマケア)の運用の見直しを関係機関に指示する大統領令に署名した。今後はこれら一連の政策が議会との調整を含めて、どのタイミングで具体化され、実施に移されるのか注目される。

 

(若松勇)

(米国)

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