違反発覚時には積極的な改善姿勢で対応-環境法律リスクマネジメントセミナー開催(2)-

(中国)

北京発

2017年01月13日

 ジェトロが2016年12月に天津市と北京市で共催した環境法律リスクマネジメントセミナー報告の後編。北京金誠同達法律事務所の趙雪巍シニアパートナー中国弁護士による環境問題のコンプライアンス対策の事例、参加者との質疑応答を紹介する。

<厳重注意処分で済んだ事例も>

 趙氏はコンプライアンス対策として次のように解説した。

 

 C社では、日本本社による環境監査の結果、a.届け出ていた危険廃棄物の年間排出量が過去3年間、実際の排出量と大きく懸け離れていたこと、b.危険廃棄物を記録・報告せずに3年間処理していたこと、c.処理委託業者の危険廃棄物経営許可証(ライセンス)の期限切れ後も処理を委託していたことが明らかになった。これに対し、C社の現地担当者は会社に、違法事実を設備の改造として虚偽申告すること、人脈を使い行政処罰の回避を模索することを提案した。

 

 しかし、贈賄による処罰回避は法的リスクが高い。C社は弁護士のアドバイスにより、環境保護局に対し、(1)環境管理手続きに違反があったことを自主的に認め、(2)実際の排出量が届け出ていた排出量を超過していた原因を特定し、再発防止工事を実施して排出量を届出量に抑えることができたことを説明、(3)第三者による環境汚染が発生していないことを証明するデータを提出、(4)危険廃棄物処理の委託先を有効な経営許可証を持つ業者に変更、(5)違法行為に対する行政処罰の受け入れを表明した。こうした積極的な姿勢が評価され、厳重注意処分で済んだ。

 

 環境保護法違反が発覚した際、まず行うべきことは原因究明であり、次に再発防止策を講じることだ。企業としてのコンプライアンス姿勢が問われるため、最も大事なことは、正しいことを正しくやることだ。環境規制の強化が進んでおり、排出基準など守るべき基準が厳しくなっている。環境影響評価報告書や排出許可が、求められている基準に合っているか点検が必要だ。

 

<処理委託契約時にライセンスが有効か確認>

 参加者からの主な質疑と趙弁護士の回答の概要は以下のとおり。

 

問:取引先の化学工場が12月初旬、112月の排出基準が目標に達していないことを理由に地元政府から操業停止命令を受けている。行政命令で、工場の操業を停止できるのか。

 

答:年間の排出総量の割り当てを上回る場合、行政命令で工場の操業を停止できる。地方政府が排出総量の割り当て目標を達成するために、企業の排出基準を厳しくする動きもある。排出基準を満たしていない企業に対し行政命令が下されることもある。

 

問:災害など不可抗力で発生した環境汚染に対し、企業は責任を問われるか。

 

答:不可抗力により発生した環境汚染事故の責任はケース・バイ・ケースで判断される。不可抗力の範囲内において発生した環境汚染事故に対して免責となっても、安全対策を取っていたかなど、その他の違法があれば、法に従って責任を追及される。

 

問:危険廃棄物の処理を有効なライセンスを有する業者に委託したものの汚染事故が発生した場合、委託した企業も責任を問われるか。

 

答:契約時に委託先の有効なライセンスを確認したものの、受託業者が契約内容に反して汚染物質を違法に処理し汚染を発生させた場合、委託側企業は責任を負わない。危険廃棄物処理委託契約書に、処理の範囲、達成すべき処理量、委託者の免責など重要事項を明記することが重要だ。なお、契約更新時にライセンスが有効か確認しなかった場合は、委託側企業も連帯責任を問われるリスクがある。

 

(日向裕弥)

(中国)

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