TPP発効に向けた準備が整う-ニュージーランド税関に聞く-

(ニュージーランド)

国際経済課、米州課

2016年12月21日

 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の批准に向けた締約国の準備状況を把握するため、ジェトロは「TPP原産地証明制度普及・啓発事業」により、ニュージーランド税関(New Zealand Customs Service)にインタビューを実施した(11月11日)。ニュージーランドでは発効済み自由貿易協定(FTA)で自己証明制度が運用されているほか、TPPが求める要請受領後150日以内の事前教示制度などを既に導入しており、発効に向けた準備は整っている。

<自己証明制度はFTAで導入済み>

 TPP協定の原産地規則では輸出者または生産者、輸入者が自ら原産地証明書を作成する「自己証明制度」が採用される。ニュージーランドでは、過去に締結した複数のFTAで、自己証明制度を既に導入している。そのため、TPPで求められる自己証明制度の導入は「ニュージーランドにとって特別なことではない」とニュージーランド税関担当者は話す。

 

 TPP協定では原産地証明書の作成において、特定のフォームは指定されていない。TPPでの申告書類のフォーマット化の方針を聞いたところ、特定のフォームを設けず、できる限り柔軟に対応していく意向だ。

 

<誤申告時の遡及期間は4年間>

 ニュージーランドでは、輸入される物品の原産性に疑義が生じる場合、確認の多くが輸入者への事後調査で行われている。事後調査で、税関当局が申告書類の記載に問題があると判断した場合はさらなる情報を求める。記載に明らかな誤りが見つかった場合は、申告内容を修正することが必要になる。その際、1996年税関・物品税法に基づき、過去4年前まで遡及(そきゅう)して正しい関税率が適用された上で、制裁金を科される可能性がある。また、特恵税率に基づく輸入申告を行う際に原産地証明書の提示が求められた場合は、「写し」も有効な原産地証明書として認められる。将来的に、日本の輸出者や生産者が原産地証明書を作成した場合、原本を輸入者へ郵送することは必ずしも求められない。

 

<事前教示制度も既に導入>

 TPPの「事前教示制度」では、輸入者などが、税関に対して輸入貨物の関税分類や関税率、原産地規則の判定などに関する照会を実施した場合、締約国の税関当局は要請受領後150日以内の回答を行う必要がある。ニュージーランド税関では現在も国内法の下で150日以内の事前教示を行っている。また、TPPは締約国に対して申告手続きの電子化実現への努力を求めているが、同国では輸入申告の9割以上が既に電子的に行われており、求められる電子システムの導入についての受け入れ環境が整っている。物品の引き取り許可についても、TPPが求める48時間以内で迅速に行われている。

 

<外国貿易省と連携して普及啓発活動を実施>

 ニュージーランド国内でのTPPの普及啓発活動については、外国貿易省(MFAT)と協力しながら行っている。その1つが主要都市における「ロードショー」の実施だ。国内におけるTPPの内容の普及啓発を目的としたもので、税関当局は実務に焦点を当てた内容のワークショップを開催した。

 

(石橋裕貴、秋山士郎)

(ニュージーランド)

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