見込まれる高成長、中小企業の活動目立つ-イラン・ビジネスセミナーをドバイで開催-

(イラン)

ドバイ発

2016年12月14日

 ジェトロは11月20日、イラン・ビジネスセミナーをドバイで開催した。経済制裁の解除や日本との投資協定締結で注目を集めるイランのビジネス環境や税務について講演が行われ、日系企業から70人が参加した。

<車や家電の需要増が期待>

 セミナーではまず、ジェトロ・テヘラン事務所の中村志信所長が「イラン政治経済最新情勢」と題して次のように講演した。

 

 イランは、2016年の実質GDP成長率が44.5%と推定され、高い経済成長が見込まれている。年代別人口をみると、2535歳の結婚・子育て世代が最大のボリュームゾーンとなっており、車や家電などの需要増が期待され、また今後は医療分野も市場拡大が見込まれる。

 

 各国首脳・閣僚が活発に訪問する中、これまで最大の貿易相手国だった中国については輸出入額が減少しつつある。一方、日本からの輸出は201619月実績が2015年を上回っており、さらなる伸びが期待される。イラン市場における最近の特徴は、中小企業の活動が目立つことだ。1058日に開催されたテヘラン国際産業見本市でジェトロが設置したジャパンパビリオンでは、出展企業26社のうち半数の13社が中小企業で、同見本市を通じて新たな代理店契約を検討する事例も出てきていることから、大企業のみならず中小企業にとってもビジネス機会が期待される市場だ。

 

 一方で、国民経済が政治・地政学的リスクの影響を受けやすく不安定であること、制度・規制の運用が不透明であることなど、ビジネスリスクには引き続き注意する必要がある。

 

<核合意の履行には引き続き注視が必要>

 続いてジェトロ・ドバイ事務所の田村亮平次長が、「米国大統領選の影響・イランの港湾」と題して講演した。

 

 イラン核合意については、ドナルド・トランプ氏が米大統領選のキャンペーン中に否定的な発言をしたものの、仮に破棄となれば、米国以外の核合意当事国からの反発、米国に対する国際社会の信用失墜、イランの核開発再開の可能性といったリスクが想定される。選挙後、トランプ氏の発言が比較的穏健なトーンとなっていること、また外交政策アドバイザーのワリド・ファレス氏が、合意を破棄するというのは強過ぎる言葉であり、トランプ氏は合意を手に取り再検証するだろうと述べていることなどから、トランプ氏もそうしたリスクは承知しているものと思われる。また、1114日のEU外相会合では、イランに関する声明として共同包括行動計画(JCPOA)合意の順守が強調されている点も注目される。

 

 しかし、核合意の破棄はなくても、解除の対象外となっている制裁の運用強化や、議会から核関連以外の制裁法案が提出される可能性などもあり、引き続き注視が必要だ。

 

 イランの港湾に関して、制裁期間中のコンテナ取扱貨物量は、2015年は2011年と比較して3割以上減少したが、直近では9月の取扱量が前年同月比16.7%増になるなど、制裁解除を機に増加傾向にある。一方、船舶の種類に着目すると、制裁解除前後で大型船の直接入港が特段増加しているわけではなく、その背景には保険などの制約があると思われる。イラン最大のバンダル・アッバース港(シャヒドラジャエ港)は、コンテナ取り扱い能力が300TEU20フィートコンテナ換算)あるが、2015年の実績は170TEUで稼働率57%。世界のコンテナ取扱量ランキングで2010年の44位から78位に下がっている。しかし、制裁解除を機に欧州・アジアの国際航路が次々と再開しており、中央アジアなど第三国への輸出も盛んに行われている。

 

<明確でない投資手続きが問題>

 最後に、大手監査・コンサルティング法人デロイト・コーポレートファイナンスのマネジングディレクターを務めるウェイン・トーマス氏ら4人が、イランの税務について、以下のように講演した。

 

 イランでは租税についての法制度が機能しており、規模・国籍にかかわらず25%の法人税、4%の株式譲渡税、5%の不動産譲渡税が賦課される。また付加価値税は20153月から9%、関税は品物によって555%と定められている。

 

 外資に対する税制優遇も定められており、地域および業種によっては5年から10年の間、100%の免税措置が受けられる。また、キッシュ島などのフリーゾーンに進出した企業は20年間の免税措置が受けられる。ただし、手続きが明確に定められておらず、ケースによってイラン側の判断や決定が異なったり、また最長で半年程度かかったりすることが問題だ。

写真 70人が参加し盛況だったビジネスセミナー(ジェトロ撮影)

(水野光)

(イラン)

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