インドで日本の鉄道技術を売り込み-ラクナウで開催の国際見本市に参加-
(インド)
環境・インフラ課、ニューデリー発
2016年12月22日
ウッタル・プラデシュ州の州都ラクナウで12月1~3日、国際鉄道見本市「InnoRail India 2016」が開催された。先立つ11月のモディ首相の訪日時には、新幹線方式を採用するムンバイ~アーメダバード間の高速鉄道の2018年中の着工と2023年の開業が確認された。この機を捉え、インド鉄道業界への日本企業の参入が本格化することが期待されている。
<パートナーカントリーとしての存在感を示す>
11月の日印首脳会談で、ムンバイ~アーメダバード間500キロを結ぶインド初の高速鉄道に日本の新幹線方式が導入されることが正式決定した(2016年11月15日記事参照)。これを受け、ジェトロはインド高速鉄道に関連する日本企業の同国での製造拠点設置を支援する「ワンストップ窓口」を担うことになった。具体的には、(1)関連情報の収集および提供、(2)ビジネスマッチングの開催、(3)関心企業への個別相談、(4)ジョイントベンチャー(JV)結成に係る支援、などを実施する。
ジェトロはワンストップ窓口事業の一環として、2016年12月1~3日にラクナウで開催された国際鉄道見本市「InnoRail India 2016」に初めて参加した。ジェトロの参加は、日印国際産業振興協会(JIIPA)が組織したジャパンパビリオンの一画に、広報ブースと商談ブースを設置する形式をとった。同見本市は、鉄道研究デザイン標準機構(RDSO)の敷地内で行われた。第1回が2014年12月に開催され、今回は2回目だ。ジャパンパビリオンには鉄道部品や関連機器メーカーをはじめ37社・団体が参加し、パートナーカントリーとしての存在感を示した。
開会式には、日本政府から田端浩・国土交通審議官や平松賢司・駐インド大使が出席した。インド政府からは、スレシュ・プラブ鉄道相がテレビ中継であいさつしたほか、インド工業連盟(CII)やRDSOの幹部が出席した。また、開会式当日はラクナウメトロの開通日でもあり、あえてこの日程を重ねることにより、国と州が一丸となって鉄道事業に取り組む姿勢を内外に示した。
<日本とインド企業とのマッチングを実施>
ジャパンパビリオンに出展した日本企業11社とインドの鉄道関連企業とのビジネスマッチングサービスでは81件が行われた。日本企業のブースを訪れたインド企業からは「日本企業の製品をインドで売りたい」「日本企業との技術提携を模索したい」といった相談が多く寄せられた。出展した日本企業は「自分たちではなかなか会うことのできない企業に会えた」「インド市場をより深く知ることができた」などのコメントを寄せており、インド鉄道市場を知るための絶好の機会となった。また、インドに拠点のない日本企業からは「日本で入手できるインドの鉄道市場の情報は乏しく、輸出や進出にかかる戦略を策定すること自体が難しい」との声もあり、今後とも継続的な市場情報の入手が重要になるだろう。
会期中に行われた「日本鉄道シンポジウム」では、日本の鉄道技術の安全性や効率性の高さがPRされ、インドにおける鉄道事業のニーズに、日本としてどのような貢献ができるか、などについて議論が交わされた。
<拡大を続けるインド鉄道市場、日本に期待される総合力>
インド国鉄が2009年12月に作成した「インド鉄道ビジョン2020」によると、インドは2020年までに約14兆ルピー(約23兆8,000億円、1ルピー=約1.7円)の鉄道関連投資を計画しており、一層の市場拡大が見込まれる。主な投資項目としては、軌道の複線化や電化から車両の調達まで、多岐にわたる(表参照)。インド鉄道の駅は旧植民地時代に整備されたものが多く、再開発および近代化が急務であり、官民連携(PPP)などの枠組みを有効活用し、400駅を近代的な施設に更新する計画もあるという。
日本の鉄道技術の魅力は、車両や部品などの技術力だけでなく、運行ノウハウやコスト管理、車両維持管理システム、駅周辺の不動産開発などにもある。今後は、高速鉄道事業にとどまらず、より市場規模の大きな都市鉄道で、駅開発なども含めた総合的な鉄道開発事業への日本企業の参入が期待される。
(遠藤壮一郎、梅木壮一)
(インド)
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