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外国人労働者の就労許可制限を継続-自国民の就業機会を優先する傾向-

(インドネシア)

アジア大洋州課、ジャカルタ発

2016年12月16日

 インドネシア政府は近年、外国人労働者の就労許可を制限し、自国民の就業機会を優先する傾向を強めてきた。外国人就労許可における学歴・職歴要件には一部緩和もみられるが、運用面では曖昧さが残るほか、2015年に唐突な方針変更があり、政策の一貫性に疑念を抱く企業も少なくない。現場からは、入国管理局担当官による査察や摘発が強化されている、とする報告も聞かれる。

2015年に突然の規定変更で進出企業の混乱招く>

 外国人労働に関する規定について、インドネシア政府は2015年、労働移住大臣規定2015年第16号(6月施行)、同第35号(10月施行)を立て続けに発令し、企業の混乱を招いた。2015年第16号では、外国人雇用の要件として、「学歴要件」や「インドネシア語習得義務」を規定から削除し、条件を緩和した。学歴要件では近年、高卒や高専卒の技術者は就労が認可されない、あるいは期間を半年に制限するなどの事例がみられたが、同規定により、長年の職務経験や技能を労働移住省へ説明することで大卒未満の就労が認められるケースが増えた。また、インドネシア語習得義務については、2015年初頭に導入を発表した外国人労働者へのインドネシア語能力試験の義務化を撤回した。

 

 しかし、同規定では代わりに、新たな2つのルールを定めた。1つ目は、現地法人や駐在員事務所を対象として、外国人労働者1人につき10人の自国民を雇用することを義務付けた。これまで、「外国商社駐在員事務所」では13ルールが規定されていたが、それ以外の進出形態では明確な規定がなく、労働移住省の担当官が事業内容や規模、従業員数を勘案して、適切な外国人数を企業ごとに判断していた。新規定による110ルールは、特に非製造業や駐在員事務所にとって高い参入障壁となるとの声が上がった。2つ目は、インドネシアに居住していない外国人の取締役や監査役(コミサリス)に、外国人就労許可(IMTA)の取得を義務付けた。これらは前触れのない突然の法令変更であり、各国商工会議所からは対応が困難として撤回を求める申し入れが相次いだ。

 

 4ヵ月後に発令された2015年第35号(10月施行)では、「外国人労働者とインドネシア人労働者の雇用比率」「非居住者の取締役・監査役のIMTA取得義務」をともに規定から外した。この要件緩和は外国人を雇用する企業にとって歓迎するものだが、こうした朝令暮改ともいえる規定改廃に対して進出企業からは、透明性が低く、中長期的に安定した政策が継続できるのかを懸念する声が多数出ている。ジェトロ「2015年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、インドネシア進出企業のうち、「ビザ・就労許可取得の困難さ・煩雑さ」を投資環境上の課題として指摘する企業は、前年調査の42.2%から17.9ポイント上昇し、60.1%となった(図参照)。この水準は調査対象国・地域の中で最も高く、2位のベトナム(31.9%)を大きく引き離しており、インドネシア特有の課題ともいえる。

図 進出日系企業における投資環境上の課題に「ビザ・就労許可取得の困難さ・煩雑さ」を挙げた上位6ヵ国

<中部ジャワでは独自にインドネシア語の試験も>

 外国人の就労許可では、「職歴要件」(5年以上の職歴を有していること)や、明文化されていない「60歳以上の高齢者」、さらに「非製造業でのアドバイザー職」などで、就労が制限される場合がある。日系A社では、入社後5年に満たない若手駐在員の滞在許可が、長期間ではなく半年間に制限されたという。

 

 「インドネシア語試験」については、前述の大臣規定により実施は白紙となったが、中部ジャワ州が2015年州知事回状により独自の制度を導入している。現地進出日系企業にヒアリングしたところ、就労許可更新のタイミングで実施され、筆記や面接による試験を実施しているという(役員は面談のみ)。不合格者には追試や講習が課され、再試に合格すれば就労許可が更新されるとしているが、現時点では最終的に就労許可が更新された例はないようだ。

 

<入国管理局による外国人の査察が強化>

 インドネシアでは20163月、観光客誘致を目的として、169ヵ国の海外旅行者らに対して取得を義務付けていた「到着ビザ」を免除した。他方、国内に多くの外国人が流入し、その中には不法就労も多くみられることから、現場では入国管理局による査察が強化されている。査察の内容は、以下の項目を中心としているようだ。

 

○就労許可を取っているか(到着ビザで長期労働していないか)。

○外国人就任を禁止している特定役職(アドミニストレーター、人事・労務担当マネジャーなど)に就いてないか、人事関係書類への署名をしていないか。

○駐在員以外の外国人はパスポート原本を携帯しているか。

 

<査察担当官によって異なる指導>

 日本企業が多く入居する工業団地やジャカルタ市内のオフィスビルでは、2016年に入ってからこうした査察や摘発が頻発している。特に、西ジャワ州では100の監視チーム(TIMPOA)が結成され、工業団地を中心に訪問査察を行っている。駐在員のアパートを訪問して、労働許可証をチェックする事例もある。また、現場の担当官による悪質な金銭要求の事例や、地方都市では本社から出張した社員が一時拘束される事例も報告されている。工業団地で勤務する駐在員はパスポートや滞在許可証の保持、出張者もパスポート保持と適切なビザの取得が必要だ。到着ビザ免除の活動範囲は、出張者によるセミナーや展示会参加などで、商談の場合はビザ取得が求められる。しかし、空港担当官にまで規定内容が行き渡らず、理解されていないことが多い。このため、入国時に異なる指導がされるなど、混乱した状況も報告されている。

 

(藤江秀樹、山城武伸)

(インドネシア)

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