各国の代理店探しに格好の機会-医療機器見本市「メディカ」開催(1)-

(ドイツ、欧州)

ヘルスケア産業課、デュッセルドルフ発

2016年12月21日

 医療機器見本市「メディカ(MEDICA)」が11月14~17日、ドイツ・デュッセルドルフで開催された。出展者は約70ヵ国から5,000社余りと過去最多になった。世界最大規模のメディカの様子を2回に分けて報告する。前編は見本市の動向や各国代理店の日本製品に対する反応について。

<日本の介護やリハビリ関連製品に注目>

 メディカは世界最大の医療機器見本市で、主催はメッセ・デュッセルドルフ。各国・地域で法的に医療機器(medical device)と定義される診断や治療に使用する製品のほか、分析機器から介護用品、医療情報通信技術(ICT)、スポーツ用品など、医療・健康に関わる製品や技術、システムまで含み、その対象は広い。併催された医療機器技術・部品見本市「コンパメッド(COMPAMED)」と合わせて、世界140ヵ国・地域から代理店や医療関係者ら約13万人が来場した。

 

 ジェトロは、国別パビリオンが集まるホール16(注1)にジャパンパビリオンを設置した。今回で8回目となり、新規代理店の開拓を狙う中小医療機器メーカーなど24社が出展した。

写真 多くの来場者でにぎわうジャパンパビリオン(ジェトロ撮影)

 極細の注射針や人工呼吸器、手術支援器具、電源がない環境でも使用可能なカフ圧調整器など、安全第一の医療現場で評価される高品質と使い勝手の良さが売りの技術が並んだ。また、糖尿病など生活習慣病や高齢化で世界的に介護やリハビリ分野への注目度が高まる中、リハビリ訓練ロボットや介護用マットレス、電動昇降洗面台、ベッド見守りシステムなどの製品に、多くの代理店の関心が集まった。

 

 ジャパンパビリオンには、ドイツなど欧州はもとより世界中の代理店が訪れた。2015年は中東からの来場者が目立ったが、2016年はロシアやポーランドなどの中・東欧、さらに中国、韓国、シンガポールなどアジアからが多く、活発に商談が行われた。

 

 出展企業の手応えは上々だ。「新製品を扱ってくれそうな代理店候補と接触できた」「未展開の国・地域への販促ができた」などの声が聞かれ、商談の順調さがうかがえた。また、2015年に比べ、その場で成約に至るケースも増えた。

 

 出展者の多くは会期中、積極的に会場内の競合他社のブースに足を運んでいた。ある出展社は「日本にいるだけではみえてこない、世界市場の『常識』に気付くことで、他国製品との差別化や新たな開発のヒントが得られる」と意気込んでいた。価格や品質、デザインなどに関する海外目線の市場ニーズを実感する場として、メディカは有用だ。

 

<医療機器以外の幅広いヘルスケア製品にも可能性>

 メディカで効率的に商談を行うためには、医療機器に関するEU指令への適合宣言(CEマーキング)が完了していることが重要となる。未対応の場合は、近々その手続きを行う旨を明示しない限り、いくら製品に特徴があっても、代理店はついてこない。

 

 世界各国では、保健当局による医療機器の販売に先立つ登録規制の強化や新たな導入の動きが加速している。特に新興国においては、審査部門の体制整備と能力強化が必ずしも十分でなく、製品の安全性や有効性を図る物差しとして、CEマーキングの有無を重視する傾向がある。メディカに来場する欧州以外の国の代理店にとっても、CEマーキングが完了した製品は、自国の登録手続きを進めるに当たっての安心材料になり、販売先の病院に対しても売り込みやすい。

 

 一方、医療・健康関連では、医療機器に該当しない製品も多数存在する。車椅子やベッドなどは日本では医療機器と定義されないが、海外では医療機器の規制対象になることに留意が必要だ。海外でも医療機器と見なされないものは、販売に先立つ現地規制への対応が不要なので、比較的速やかに流通させることができる。各国の代理店が関心を寄せる日本製品は、必ずしも法的に医療機器に定義される範囲にとどまらない。医療や介護、スポーツ、美容など、日本国内において健康の維持・増進に直接、間接に役立つ幅広いヘルスケア製品にも海外販路開拓の可能性がある。

 

<変化する出展者の顔ぶれ>

 メディカではこれまで、先進国の大手医療機器メーカーがこぞって中核ホールに大型ブースを構え、医師や代理店に対して新技術を積極的に紹介してきた。メーカーが世界各地の代理店を集めて、営業方針や売れ筋商品の紹介や連携を確認し合う場にもなっている。出展各社の開発担当も参加するなど、商談一筋の展示会とは異なる趣もあった。

 

 近年、出展者の顔ぶれは変化しつつある。かつて常連だった世界的大手企業が展示から撤退したり、展示面積を縮小したりしている。世界各地で医療分野が成長領域として注目される中、メーカー間の競争は年々激化している。中国などの新興国企業が技術開発や買収を通じて徐々に実力をつけ、かつては欧米や日本の大手企業の独壇場だった市場でも幅を利かせ始めている(注2)。世界の代理店網をある程度整備したグローバル大手は一般的な展示会よりも、自社製品が直接関係する学会の併催展や、ピンポイントで売り込みをかけたい病院向けのプレゼンテーションに注力することで、より効果的なビジネス展開を図っているとみられる。

 

 一方、海外展開を始めたばかりの企業や、欧州を中心とする新たな代理店網を開拓したい企業にとって、メディカの重要性は変わらない。世界中の代理店と出会う場として、毎年1月末に開催されるドバイの展示会「アラブヘルス(Arab Health)」と並ぶ、優れた商談機会だ。グローバル大手が去った中核ホールには、新たな企業が出展し、自社製品をアピールしている。「出展者数が過去最多」の背景には、中小企業も含めた世界中のメーカーが果敢にグローバル市場に販路開拓に乗り出していることがある。

 

 なお、次回のメディカは2017111317日、同じくデュッセルドルフで開催の予定だ。

 

(注1)メディカの会場は国際館のほか、製品分野別に構成。ホール13:検査技術、診断機器。ホール45(一部):理学療法・整形外科技術。ホール 5(一部)~7:医療用備品、単回使用製品、繊維。ホール914(一部):電子医療機器、医療機器、手術機器および設備。ホール14(一部):病院設備、通信システム。ホール15(一部):情報技術および通信技術。ホール15(一部)~17:主として国際館。

(注2)生体情報モニターや超音波診断装置を製造する中国医療機器大手のミンドレイ(mindray)はその最たる例の1つ。同社はメディカに大型パビリオンを設け、照明やベッドを含む手術室全体の販売を提案した。

 

(シッチ・アナスタシア、福井崇泰)

(ドイツ、欧州)

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