外国貿易・外国投資相らが日本企業に投資を呼び掛け-「キューバ投資促進セミナー」を東京で開催-

(キューバ)

米州課

2016年12月12日

 キューバのロドリゴ・マルミエルカ外国貿易・外国投資相の来日を機に、ジェトロは11月29日、東京で「キューバ投資促進セミナー」を開催した。128社・団体から参加した174人を前に、同相のほか、外国貿易・外国投資省(MINCEX)のデボラ・リバス海外投資局長が投資の誘致方針と機会について、マリエル開発特区(ZEDM)事務所のアナ・テレサ・イガルサ所長がZEDMの概要について説明した。

1つの国に依存せず多くの国や企業と信頼関係を構築>

 セミナー冒頭、ジェトロの眞銅竜日郎理事は、11月に開催された第34回ハバナ国際見本市でジェトロが運営したジャパンパビリオンが過去最大規模の出展だったこと、同パビリオンのオープニングに合わせてキューバ商業会議所と協力覚書を締結したことを報告し、両国間のビジネス促進の取り組みを継続していくと述べた。

 

 次いでマルミエルカ外国貿易・外国投資相が、2012年、2013年にそれぞれ合意した対日民間債務、短期公的債務返済の救済合意の約束をキューバが着実に履行していること、201512月に主要債権国14ヵ国と合意した中長期公的債務返済の救済合意は、キューバと日本の経済・通商関係、2国間協力を拡大する契機となると述べた。また、米国の経済封鎖が継続しようがしまいが、キューバは1つの国に依存せず、多くの国や企業と信頼関係を築きたいとの考えを示し、日本や日本企業とはそのような関係を築けると確信しているとし、日本企業に投資を呼び掛けた。

 

 日本キューバ経済懇話会(JCEC)の近藤智義会長は、1128日に開催された「第2回官民合同会議」と29日の「第14回日玖経済懇話会合同会議」において、日本企業によるキューバへの投資に必要不可欠な条件など、実践的な議論をキューバ政府と行ったと述べ、キューバの投資環境の好転と日本企業による投資実現に期待感を示した。

 

<外国資本が参入可能な分野を拡大>

 MINCEXのリバス海外投資局長は、キューバの外国投資政策の一般原則や有望な投資分野について説明した。一般原則のポイントは、(1)輸出促進と輸入代替を進めることにより国家開発に必要な外貨を確保する、(2)生産チェーンのボトルネックを解消する、(3)電源構成の変化に寄与する投資、すなわち再生可能エネルギーへの投資を誘致する、(4100%外国資本による投資を認めることだとした上で、最近、この一般原則を見直し、インフラ開発に外国投資を取り入れ、特に観光分野関連の案件を優先することを決定したことを明らかにした。

 

 また、外国投資法は協同組合との合弁や国際経済提携契約(会社設立を伴わず、キューバ側パートナーとの契約に基づいて行われる事業)を認めているが、新たに「農業協同組合の参加を伴う外国投資の前提条件」が示された。リバス局長は、外国企業と農協の共同事業は新しい取り組みであり、国内の農協に対して説明会を開催しているところだと述べ、農協と国営企業が100%キューバ資本の会社を設立し、その会社と外国企業が国際経済提携契約を締結して農業生産を行うスキームを例示した。また、新たに電気通信・情報通信・郵便サービス、水、銀行・金融の分野別政策を示した。ただし、100%キューバ資本の金融機関の買収や外国銀行の支店開設、電気通信サービスの運営・提供などへの投資は認められないという。

 

 キューバ政府が外国資本を優先的に呼び込みたい365案件をまとめた「投資機会ポートフォリオ20162017」についても紹介した。前年に公表された「投資機会ポートフォリオ20152016」から外国企業と交渉中の案件を削除し、新たに120案件を追加したという。優先的に投資を呼び込みたい分野は、製造、観光、バイオテクノロジー・製薬、運輸、鉱業、再生可能エネルギーで、投資機会ポートフォリオに記載のない案件でも国営企業に提案、協議して実現する余地があるという。なお、最新の投資機会ポートフォリオはキューバ商業会議所などのブサイトで入手できる。

 

<開発特区の19投資案件を認可>

 ZEDM事務所のイガルサ所長は、ZEDMの概要と投資恩典について説明した。ZEDMは首都ハバナの西45キロ付近にあり、高速道路や鉄道でハバナと結ばれている。ホセ・マルティ国際空港からのアクセスも良好だ。ZEDMに投資する外国企業やキューバ企業は、開発事業者か特区使用者の認可を受けて事業を行う。開発事業者はZEDMのインフラ整備を、使用者はZEDMで財やサービスの生産活動を行う。いずれの場合でも外国企業は外国投資法が定める100%外国資本、合弁、国際経済提携契約のいずれかの投資形態となる。

 

 ZEDMの投資恩典は外国投資法よりも手厚いという。例えば外国投資法では、100%外国資本の場合は利益税は減免されないが、ZEDM100%外国資本で投資をする場合は利益税の減免を享受できる。操業に必要な各種許認可は、ZEDMの単一窓口(Ventanilla Unica)を通じて取得できるのも強みだという。

 

 2014年時点の認可企業は、ZEDMに近いマリエル港のコンテナターミナル運営会社だけだったが、現在は19社に増え、投資総額は92,630万ドル、2,836人の雇用を創出しているという。投資形態別にみると、100%キューバ資本4社、100%外国資本10社、合弁企業4社、国際経済提携契約1社となっているとして、イガルサ所長は、これまで認可を受けたことのない日本企業による投資に強い期待感を示した。

 

(西澤裕介)

(キューバ)

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