FTAAP構築やRCEP早期妥結に向けて交渉を推進-習国家主席がAPEC・CEOサミットで発言-

(中国)

北京発

2016年12月08日

 ペルーの首都リマで11月19日に開催されたAPEC・CEOサミットで、中国の習近平国家主席が基調講演を行い、より積極的な開放戦略を実行し、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の早期妥結に向けて交渉を推進する、と発言した。また最近、既存の自由貿易協定(FTA)のアップグレード交渉を開始する発表が相次いでいる。

<トランプ氏が離脱明言したTPPの先行き不透明を受け>

 APEC首脳会議に合わせて開催された1119日のAPECCEOサミットでは、習国家主席が基調講演を行い、中国の経済発展を推進する取り組みの1つとして、「経済のグローバル化進展に深く関与し、マルチ貿易体制を支援し、FTAAPの構築、RCEPの早期妥結に向けて交渉を推進する」と語り、開放型経済を目指していく姿勢を示した。

 

 また、商務部の沈丹陽報道官は1124日の定例記者会見で、RCEPについて「各国と協力し、なるべく早期に交渉を妥結させ、アジア太平洋地域の経済統合を進めたい」と述べた。

 

 米国大統領選挙で当選したトランプ氏が環太平洋パートナーシップ(TPP)離脱を明言したことで、世界のGDP4割を占める巨大経済圏の誕生は先行き不透明となった一方、15回の交渉と4回の閣僚会合を行ってきたRCEPが注目を集めている。商務部国際貿易経済合作研究院区域経済合作研究中心の張建平主任はRCEPの進展について、「年内に協定文の合意がみられれば、地域の経済統合および世界の経済貿易発展の牽引効果が大きい。第1段階の協定文の合意をまず行い、それからバージョンアップを通じて、RCEPのアップグレードを進めていけばよい」との見方を示した(上海証券報1125日)。

 

<既存FTAのグレードアップにも取り組む>

 APEC首脳会議の開催に合わせ、1120日に中国の高虎城商務部長とニュージーランドのマクレー貿易相はFTAのアップグレード交渉の開始を発表した。交渉分野はサービス貿易、競争政策、電子商取引、農業協力、環境、原産地規則などに及び、2017年上半期に初回交渉を始めて、早期妥結を目指すという。中国・ニュージーランドFTA200810月に発効して以降、両国間の貿易額は年平均15%以上も伸びており、2015年には115億ドルに達した。

 

 1121日には、中国とペルーはFTAのアップグレードに関する覚書に調印し、2国間FTAのアップグレードに関する共同研究の開始を宣言した。中国・ペルーFTA20094月に締結され、20103月に発効。中国の税関統計によると、2015年の両国間の貿易額は143億ドルに達した。商務部によると、ペルーにとって中国は最大の輸出かつ輸入国となっており、中国にとってペルーは中南米地域における第5の貿易相手国だ。

 

 1122日には、中国の高商務部長とチリのエラルド・ムニョス外相は両国が結んでいるFTAのアップグレード交渉を開始すると宣言した。中国・チリFTA200511月に調印され、200610月に発効。2015年の両国間の貿易額は317億ドルとなった。

 

 国務院は2015126日付で「FTA戦略を加速する若干の意見」(国発[201569号)を発表し、周辺をベースに世界に向けたハイレベルのFTAネットワークを構築する方針を打ち出していた。中国は現在までにASEAN、シンガポール、パキスタン、ニュージーランド、ペルー、韓国、オーストラリアなど14ヵ国・地域とFTAを結んでおり、これらの国・地域との貿易額は中国の貿易総額の38.5%を占めている(2015年実績)。

 

 商務部国際貿易経済合作研究院が20161122日に北京で開催した「中国の開放と発展」フォーラムで、商務部国際司の張小剛司長は、中国は当面、湾岸協力会議(GCC)、ノルウェー、中日韓、RCEP、スリランカ、パキスタン(グレードアップ交渉)、モルディブ、ジョージアとのFTA交渉を進めているとし、これらのFTAが締結された場合、中国の貿易額全体の5割をカバーすると指摘した(「21世紀経済報道」紙1124日)。

 

(張敏)

(中国)

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