自由変動相場制への移行、中銀が発表

(エジプト)

カイロ発

2016年11月07日

 エジプト中央銀行は11月3日、1ドル=8.8エジプト・ポンド(EGP)に固定されていた対ドル為替レートについて、暫定的な誘導水準として1ドル=13EGPに設定する大幅な切り下げを行った上で、自由変動相場制に移行して即日実施した、と発表した。対ドル為替レートは、従来の公式レート(8.8EGP)から50%近く切り下げられたことになる。外貨不足に苦しむエジプトでは、8月に政府とIMFとの間で120億ドルの暫定融資に合意したが、その際に求められていた条件のうち、財政健全化に向けた新付加価値税13%の導入(9月に実施)に続き、為替自由化に踏み切った格好だ。

<主要外貨収入が伸び悩み借り入れでしのぐ状況に>

 エジプトの並行レート市場では、9月から10月にかけて1ドル=12EGP台から16EGP台までポンドがじりじりと下げ、11月に入って18EGPまでポンド安に振れた。その直後の112日午後には13.514EGPまで急反発した。同日夜には11EGPとさらに高騰したことから、切り下げのうわさが流れていた。当地紙「アル・アハラーム」によると、3日の市中銀行レートでは、電信買い相場が1ドル=13EGP、売り相場が14.3EGPとなった。なお、エジプト中銀は同日付の声明で、外貨を優先的に調達できる品目リスト(基礎物資・医薬品、中間財・部品など)の廃止、基礎的品目の預け入れ・引き出し制限額の撤廃にも言及したが、不要不急とされてきた品目についての取り扱いは現段階では明らかにされていない。

 

 112日には、エジプト会議所連盟から、向こう3ヵ月間の不急な品目の輸入を自粛する旨の声明も出ていたが、自由化後の通貨下落を和らげるよう呼び掛ける意図があったとも考えられる。日系企業のみならず、国内向け取引を行っている企業・代理店から、受注残を抱えながら製造や販売はできない、との声も一部に聞かれていた。

 

 また外貨不足については、主要外貨収入源である、エネルギー輸出、スエズ運河、観光、出稼ぎ送金の4部門が20152016年度(20157月~20166月)に伸び悩み、短期的に国際機関や湾岸諸国などからの借り入れでしのいでいる状況にあった。今後の為替相場の値動きとともに、政府および中銀の施策にも注目が集まる。

 

(池田篤志)

(エジプト)

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