インド税関職員向けセミナーをニューデリーで開催

(インド)

ニューデリー発

2016年11月22日

 ジェトロと経済産業省は9月26日、インド財務省の中央物品税関税局(CBEC)と協力し、インド税関職員向けセミナーをニューデリーで開催した。税関職員の能力向上と、模倣品のインドへの流入阻止が狙いだ。ジェトロが作成に協力した研修モジュールが公表されたほか、日系企業が真贋(しんがん)判定のポイントを解説した。

<ジェトロが作成に協力した研修モジュール公表>

 インド税関職員向けの研修セミナーは、模倣品を水際で差し止める税関差し止め制度の運用向上のための協力事業の一環で、2012年の第1回セミナーから今回が5回目の開催となる。インド全土から約40人の税関職員が参加した。

 

 セミナーでCBECは、ジェトロの協力を得て作成した税関手続きの概要を学習するための研修モジュールを公表し、税関差し止め関連法やオンラインを活用した税関手続きについて税関職員に解説した。

写真 セミナー会場内の様子(ジェトロ撮影)

<大手日系企業4社が真正品と模倣品の判定ポイントを解説>

 第1部では、日系企業4社が、知的財産権保護の取り組み、水際での模倣品対策の実例、真正品と模倣品を見分けるポイントなどを解説した。真贋判定ホログラムを紹介したA社は「ホログラムによる真贋判定方法は非常にシンプル。専用の特殊フィルムを通したホログラム変化を見るだけで、誰でも簡単、かつ確実に真贋の判定が可能」とし、ホログラムの貼り付け位置をスライドで示すとともに、真正品と模倣品でホログラム変化が異なる様子を動画で比較しながら説明した。会場内には各社の真正品と模倣品の比較展示ブースが設置され、各社の知財責任者と税関職員が活発な質疑応答をした。

写真 比較展示ブースに集まる税関職員たち(ジェトロ撮影)

 第2部では、FIDUS法律事務所のシュエタシュリー・マジュンダール弁護士が、近年の税関および知的財産権侵害に関する判例、税関差し止めの手続き、水際で模倣品を発見する手法などを紹介した。同弁護士は「模倣品は生産過程で品質管理がされていない場合が多く、品質チェックが真贋の見極めに有効」と述べた。また、インド法定計量法(Legal Metrology Act)に基づく製造業者連絡先のパッケージへの明記義務を挙げ、「パッケージをよく見ることも重要。パッケージには製造業者連絡先のほか、商品名、バーコード、リサイクルマーク、原材料などの多くの情報が印刷されているが、模倣業者はこれらの複製に時間をかけない。パッケージに情報の省略や誤記があれば、模倣品の可能性が高い」とアドバイスした。

 

<水際措置のベストプラクティスを説明>

 第3部では、世界税関機構(WCO)、日本関税協会知的財産情報センター(CIPIC)およびインド税関がそれぞれ水際措置のベストプラクティスを概説した。CIPICの松本敬事務局長は、日本における税関差し止め件数など統計情報を示しながら、税関差し止めの実例として1つの薬瓶の中に真正品と偽造医薬品が同梱(どうこん)されていた件を挙げ、巧妙化する輸出手法への注意喚起と日本の税関差し止めの実効性の高さを解説した。また同事務局長は、日本では全国の税関に知的財産調査官部門が設置されており、このうち東京税関の総括知的財産調査官部門が各税関に統一的な情報を発信・助言する知的財産関係業務の全国センターとして機能する組織体制を紹介したほか、税関における知的財産権侵害の認定プロセス、税関と権利者の協力関係、啓発活動などについても説明した。

 

 日系企業B社は「模倣品による健康・安全への被害例も当社に報告されている。税関職員が本日共有された情報を各職場に持ち帰り、内部に周知してほしい」と語った。日系企業C社は「税関職員がその場で真正品か模倣品かを判定するには限界がある。重要なのは、税関職員が疑念を抱いた際に、権利者に通報する体制が構築できているどうかだ」とし、今回のセミナーについて「インド各地の税関職員とのコネクションを構築できたことは当社にとって有意義だった。今後も継続的に税関との関係を強化していきたい」と述べた。

 

(大谷仁郎)

(インド)

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