カメルーン、EU製品に対する輸入関税率の引き下げを開始-EUとのEPA暫定適用が3年目に-

(カメルーン、EU)

中東アフリカ課

2016年11月08日

 カメルーンの財務省は8月4日、EUとの暫定経済連携協定(EPA)の下、EU製品に対する輸入関税率の引き下げを開始した。カメルーンが加盟する中部アフリカ経済通貨共同体(CEMAC)諸国からは対外共通関税の規定違反との声も上がっている。

EUからの輸入関税を段階的に撤廃>

 カメルーンは20147月にEUとの暫定EPAを批准し、同年84日に同EPAの暫定適用が開始、2年間の猶予期間を経て201684日から一部品目の関税率の引き下げを開始した。EU製品に対する関税率の引き下げを適用するには、原産地規則とその運用手続きに関する大統領令の成立が必要で、83日に大統領が署名、直前の成立となった。

 

 カメルーンは200712月にEUとのEPA締結に合意。EPA発効に必要な措置を取っているとして、20081月からEUの市場アクセス規制15282007により、EU市場での特恵措置(数量制限なく無税で輸出が可能)が適用されていた(注1)。同EPAの条文でも、暫定適用を待たずして、関税率の引き下げを20081月から開始することが規定されている(218項)。同規定によれば、EU製品に対する輸入関税率は品目グループごとに20101月から段階的に引き下げられ、2023年に撤廃されるスケジュールとなっている。しかし、カメルーン側はこのスケジュールを68ヵ月後ろ倒しして適用を開始した計算となる。そのため、EU側は同EPAで定められた期限の順守に向けてカメルーン側と協議を続けているとしている。一方、カメルーン側は2026年を期限とするよう提案を行っている(カメルーン経済計画国土整備省)。

 

 EU2003年から、カメルーン以外の中部アフリカ諸国ともEPA締結に向け交渉を行ってきた。欧州委員会によると、中部アフリカの多くの国は後発開発途上国(LDC)なので、EU市場に武器以外の全品目を数量制限なしに無税で輸出できるEBAEverything but Arms)が適用されているが、EPA交渉は続けていくという。

 

<非LDC諸国はEU市場での競争力低下を懸念か>

 EPAに移行するとEUに対して自国市場を開放することになるため、財政基盤が弱く、国内産業を保護したいLDC諸国はEPA交渉に後ろ向きだ。一方、非LDCのカメルーンはEUとのEPAの適用を目指してきたものの、内外で批判が出ていた。国内では税収の大幅減少を懸念する声が上がり、国外ではカメルーンが加盟する中部アフリカ経済通貨共同体(CEMAC、注2)がCEMACの対外共通関税の規定違反だと抗議し、また中部アフリカの地域統合への脅威だとする見方も報道されている(「アフリカン・アーギュメンツ」紙926日)。

 

 しかし、LDC諸国がEUへの輸出にEBA、輸入には対外共通関税で安定した権益を確保しているのとは異なり、カメルーンはEPAにより、EU市場への特恵アクセスの維持を優先せざるを得なかった。

 

 カメルーンの輸出に占めるEUの割合は約5割で、原油、カカオ、木材、バナナが主要品目だ。2000年代後半から中国向けに原油と木材、2014年以降はインド向けに原油が急増し、EU向けの割合は近年低下しているとはいえ、カメルーンと同じような一次産品をEUに輸出するアフリカの国は多い。一次産品価格が低迷する中、通貨安に直面する国の輸出品目の価格競争力は高まっているが、CEMACの共通通貨であるCFAフラン(XAF)はユーロに固定されているため、カメルーンはそのメリットを得られない。そうした中で、カメルーンの輸出品目に関税が課せられれば、EU市場での競争力を失うと政府が危惧したのも当然だろう。

 

 しかしEUからの輸入品の関税の引き下げによる税収減は避けられず、脆弱(ぜいじゃく)な国内産業への影響も小さくないとみられる。政府には、税制改革、国内産業の育成に加え、CEMACの対外共通関税に関して加盟国との調整も求められる。

 

(注1)それ以前は、EUとアフリカ・カリブ海・太平洋諸国(ACP)とのコトヌ協定により、EUACPに対し片務的な特恵措置を設けていた。しかし、WTO協定に反するとされ、WTO閣僚理事会の決定(2001年)を受け、6年間の猶予期間を置いて200712月末に同協定は失効した。

(注2)中部アフリカ諸国のうち、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コンゴ共和国、ガボン、赤道ギニアの6ヵ国が加盟している。

 

(尾形惠美)

(カメルーン、EU)

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