外国投資拡大が新政権の基本政策-モンゴル経済の現状と課題(3)-

(モンゴル)

中国北アジア課

2016年11月16日

 外国からの直接投資を拡大させることは、8月に発足したエルデネバト政権の基本政策だ。外国人投資家の権益を保護し、投資関連の法制度を整備し、投資家の不服申し立てに対応するため国際機関とも協力して取り組んでいく方針だ。近未来のモンゴルビジネスの可能性を探る連載の3回目は、外資誘致に関する政策と投資機会について。

<国際機関と協力して投資家を保護>

 国家開発庁のバンズラグチ・バヤルサイハン長官によると、外資誘致などを目的としてエルデネバト政権で国家開発庁が新設され、その役割は「国家開発政策」を策定し、外資誘致策や官民連携(PPP)の計画策定と実施にある、という(モンゴル貿易投資フォーラムの資料「モンゴル国の資誘致政策と投資機会」参照)。

 

 そのため内閣府は投資家の権益を保護する評議会を設立し、投資関連の法制度を整備し、外国投資家の不服申し立てに対応するために国際機関とも協力して投資家保護に取り組むとしている。

 

 外国からの投資を誘致する具体的な分野としては、(1)インフラ開発、(2)農業、(3)工業、(4)鉱山、(5)観光分野を挙げている。中でも(1)は、豊かな自国資源を活用して輸出を拡大する必要があるとして、そのために、経済回廊の開通など隣国の中国・ロシアと3ヵ国間でトランジット輸送に関する交渉を開始した。経済成長に不可欠な道路・輸送・エネルギー網の拡大も計画しており、外国からの投資に期待している。

 

 法制度の整備については、国際条約、民間企業と投資紛争の解決に関わる条約など、さまざまな国際条約を締結しており、2国間投資保護協定も43ヵ国・地域と締結している。

 

<日本の先進技術導入に期待>

 一方、投資に関する制度は、2030年までの「持続的開発指針」に基づいて策定している。モンゴルビジネスにおいては、開発政策、投資法、会社法、企画法、投資基金法、鉱物資源法などの関連法令が基本となっている。

 

 日本との関係については、日モンゴル経済連携協定(EPA)が日本からの投資誘致において重要な位置付けにあり、日本の先進技術の導入などに期待を寄せている。加えてモンゴル側5,700品目、日本側9,300品目の輸入関税を即時および段階的に撤廃することが決められており、貿易の一層の円滑化や貿易量の拡大が実現できるとする。その他、税関手続きの簡素化や非関税障壁も削減方向にある。

 

 投資に関する税制面の支援としては、(1)経済特区における5年間の免税措置、(2)中小企業に対する関税・付加価値税の免除、(3)投資額が5,000億トゥグルク(約200億円、1トゥグルク=約0.04円)以上の案件は政府から特別優遇が得られる投資契約が締結される、などがある。

 

 税制以外でもさまざまな優遇措置がある。モンゴルでは契約により60年まで土地を貸与されるが、同じ条件で40年の延長が可能。また投資家の入国回数が多い場合はビザ免除措置がある。インフラ・製造・科学・教育分野においては外国労働者、専門家受け入れの拡大、許可手続きの簡素化がある。

 

<投資情報を積極的に提供>

 国家開発庁はモンゴル経済成長のためのプロジェクトをリストアップし、情報提供も行っている。この中で、ウランバートル新国際空港建設は日本の円借款案件で、100%日本の基準で実施されている。施工業者は三菱商事、千代田化工建設となっている。

 

 同リストには建設、石油、鉄鋼・金属、エネルギー、農牧業などの案件があるが、ほとんどのプロジェクトのフィジビリティー・スタディー(FS)は既に終えているとしている。

 

 20167月にアジア欧州会合(ASEM)で協議された新しい情報を含む「モンゴル投資ガイドブック第3版」が完成し、投資関連の情報普及にも努めている。国家開発庁のウェブサイトでも、モンゴルでの企業設立のノウハウやビザ取得手続きと情報などの情報提供を行っている。

 

 世界銀行によると、モンゴルの2016年のビジネス環境は189ヵ国中59位に上昇し、アジア太平洋地域では6位となっている。

 

(黄海嘉)

(モンゴル)

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